本研究では、非整数階微積分及び複素解析の視点からラフパス理論の基礎研究に取り組み、特にラフ積分と呼ばれるラフパス理論における線積分概念に関して体系的な研究成果を得ている。 昨年度はラフ微分方程式と呼ばれるラフパス理論における微分方程式概念に関する研究に取り組む中で、本研究のラフ積分に関するこれまでの議論を改良することができた。この議論を用いて本研究のラフ積分の積分区間に関する加法性を示し、通常のラフ積分を経由しないより直接的な証明を得た。この研究成果は査読付き論文として学術雑誌に掲載が決定した。 本年度は引き続きラフ微分方程式の基礎研究に取り組んだ。非整数階微積分及び複素解析の視点から、本研究に適したラフパス空間を見出し、そのラフパスで駆動される微分方程式の理論構築が目標である。昨年度の研究成果を更に推し進めることで、ヘルダーラフパスよりも広いクラスのラフパスに対して、ラフ微分方程式の解の存在、一意性、連続性の証明に取り組んだ。 ラフ微分方程式の研究に関連して、本年度はラフパス理論の第1基本定理(Lyonsの拡張定理)の研究にも取り組んだ。研究代表者のこれまでの研究により、ラフパス理論の第1基本定理の拡張写像に対して、非整数階微分作用素を用いたルベーグ積分による明示的な表現式が得られているが、ヘルダーノルムから導出される定量評価は不十分であった。本研究に適したラフパス空間のノルムを精密に用いることで、拡張写像の定量評価の改良に取り組んだ。
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