研究課題/領域番号 |
18K13433
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
西本 美香 (反田美香) 関西学院大学, 理工学部, 助教 (00768012)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 完全WKB解析 / 超幾何関数 / 超幾何微分方程式 / Voros係数 / Borel和 / Borel総和法 |
研究実績の概要 |
本研究では超幾何微分方程式の完全WKB解析について研究を行っている.2019年度は昨年に引き続き,大きなパラメータを含むGaussの超幾何微分方程式において,以下の研究を行った. (1)Gaussの超幾何微分方程式の解である超幾何関数と大きなパラメータを含むGaussの超幾何微分方程式の形式解であるWKB解のBorel和,この2つの解の関係について研究を行った. 昨年も同様の研究を行っていたが,ブランチの取り方を考慮していなかったため,超幾何関数の既存の結果を完全WKB解析の立場から再現することができなかった.そのため,2019年度はブランチを考慮して,再度計算することにより,正確な上記の関係を得ることができた.これにより超幾何関数の既存の結果を完全WKB解析の立場から得ることができた. 同様に,大きなパラメータを含む合流超幾何微分方程式において合流超幾何微分方程式の解である合流超幾何関数とWKB解のBorel和の関係についてもブランチを考慮し,再度計算を行い,2つの解の関係を得た. (2)大きなパラメータの導入を特殊にした場合のGaussの超幾何微分方程式ついて超幾何関数とWKB解のBorel和の関係の研究を行った. この特殊な場合は,変わり点と呼ばれる大きなパラメータを含むGaussの超幾何微分方程式に現れるある関数の零点と超幾何関数の特異点である原点の2点が合流する場合についてである.この場合の超幾何関数とWKB解のBorel和の関係の結果は,(1)の超幾何関数とWKB解のBorel和の関係の結果に大きなパラメータを特殊に導入したものと一致することが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)の超幾何関数とWKB解のBorel和の関係については、昨年の結果が正しいと考えていたため,昨年の結果をまとめ2019年度初めに論文を投稿する予定であった.しかし,概要にもあるように,ブランチを考慮していなかったため,再度始めから計算をする必要があったため,現在投稿中であるものの論文作成が遅れてしまった.上記の再計算に時間がかかったこと,さらに自身が妊娠,出産を今年度したため,(2)の場合と異なる特殊なパラメータの導入の場合の超幾何関数とWKB解のBorel和の関係についても研究予定であったが計算の時間がなかった.さらに,自身の博士論文の結果であるパラメータに関するStokes幾何について超幾何関数を解に持つ差分方程式の立場から別証明を与える予定であったがそれも今年度はできなかった.
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今後の研究の推進方策 |
現在,大きなパラメータを含むGaussの超幾何微分方程式において超幾何関数とWKB解のBorel和の関係を明らかにしたため,2020年度は上記の関係を含め,Gaussの超幾何微分方程式における完全WKB解析をまとめ,2階の超幾何微分方程式における完全WKB解析の基盤を作成,成果の発表を行う予定である.また,2019年度に結果を得たものとは異なる場合の大きなパラメータの導入方法を特殊にしたときの超幾何関数とWKB解のBorel和の関係についても研究を行い,結果をまとめ,発表を行う予定である.この特殊な場合は物理や可積分の分野等にも応用されると予想されるため,様々な分野の研究集会で発表をしたいと考えている. さらに,Gaussの超幾何微分の差分方程式の立場から、自身の博士論文に記載した結果であるパラメータにおけるStokes現象について研究を行い,得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う.すなわち,自身の結果の別証明を与える予定である. また可能であれば高階の超幾何微分方程式における完全WKB解析について研究を行い,得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う.特にBorel総和可能性(WKB解のBorel和がとれるか)について研究を行う予定である.超幾何関数とWKB解のBorel和の関係やパラメータにおけるStokes現象で必要であるVoros係数については近畿大学の院生である内田氏が具体形を求めた.しかし,そのBorel和については明らかにしていない.Borel総和可能かどうかを明らかにすることにより超幾何関数とWKB解のBorel和の関係およびパラメータに関するStokes現象の具体形が計算可能である.そのため,京都大学にて月に1,2回行っている完全WKB解析の分野の方々とのセミナーで近畿大学の内田氏を含め、様々な方と議論を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
妊娠,出産をしたため,2019年度は計画していた出張にいけなかった.そのため,次年度使用額が生じた. 2020年度も育休中のため,今後の研究計画に必要な知識を学ぶことを中心に行いたいと考えている.そのため,参考図書を購入および,論文が読みやすいようにタブレットを購入予定である.また,育休明けには国内の研究集会には参加予定であるため,出張費としても使用する予定である.
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