研究実績の概要 |
Orlicz極大作用素に対するLp空間上の有界性やFefferman-Stein型の不等式が成り立つための必要十分条件は,Bp条件として知られている.一方で,分数冪Orlicz極大作用素に対するLebesgue空間上の有界性に関する必要十分条件は判明していなかった.本研究における現段階の研究実績は,その課題に対する結論と考えてよい.具体的には次の結果である:通常の分数冪極大作用素における荷重Lp空間上の有界性に関してはSawyerの不等式が成り立つことが知られており,これはFefferman-Steinの不等式を分数冪極大作用素の場合に拡張したものと解釈できる.その一方で分数冪極大作用素におけるLp空間からLq空間への有界性に関してはHardy-Littlewood-Sobolevの不等式が成り立つことが知られている.本研究によって,次のことが判明した. 1.分数冪Orlicz極大作用素におけるSawyer型の不等式が成り立つための必要十分条件はBp条件であること,すなわちOrlicz極大作用素におけるLp空間上の有界性やFefferman-Stein型の不等式が成り立つための条件と同値であることが判明した. 2.分数冪Orlicz極大作用素におけるHardy-Littlewood-Sobolevの不等式が成り立つための必要十分条件を導出した.その結果によれば,Orlicz極大作用素に対するLp空間上の有界性の方が分数冪Orlicz極大作用素に対するHardy-Littlewood-Sobolev型の不等式よりも本質的に強い不等式であることが判明した. 3.Orlicz極大作用素に対する弱型不等式が成り立つための必要十分条件が知られているが,分数冪Orlicz極大作用素に拡張した場合の弱型不等式が成り立つための必要十分条件について考察した.その結果,Orlicz極大作用素に対するLp空間上の弱有界性と分数冪Orlicz極大作用素に対するSawyer型の弱有界性や分数冪Orlicz極大作用素におけるHardy-Littlewood-Sobolev型の弱有界性が成り立つための条件は全て同値であることが判明した.
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次年度使用額が生じた理由 |
学会講演や研究会等で使用しているノートパソコンが老朽化しており,交換の時期に差し掛かっている.さらに紙媒体の論文等の文献資料が膨大なものとなっており, それらの資料の整理をすることが必須であると考えている.そのために文献資料の電子化をするべく, スキャナの購入を計画している. 占めて,およそ33万円ほど使用する. さらに, 日本数学会や実解析シンポジウム,調和解析セミナー,京都大学RIMS研究集会などの研究集会に参加し,そのいくつかにおいて講演発表を行う予定がある.そのためにその費用として約30万円ほど使用する.1万円で文房具の購入,8万円で,論文のオープンアクセス化,別刷り出版料金等を計画している.
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