研究課題
本年度は当研究遂行中に完成した成果としてまとめた学術論文が3篇出版された.いずれも査読付き国際学術誌に投稿し,掲載された.一つ目は非線形境界条件を持つ異常拡散方程式の時間大域解の存在・非存在に関する研究であり,領域が球,球の外部領域の場合について時間大域解の存在に関する臨界指数を求めた.この結果は非線形境界条件を持つ異常拡散方程式の問題について最も基本的なものであり,今後はより発展的な研究につながることが期待される.二つ目は低階の非線形項を持つ多孔質媒質方程式の初期値問題の解の存在に関する研究である.この研究では解が存在するための十分条件を,初期関数の空間について局所的な特異性および空間遠方での増大度という二点についてある意味で最適な範疇で求めた.この結果は約30年前の研究結果で証明されなかった点について証明を与えたという意味で一定の価値があると考えられる.この研究を基礎として広範な問題への応用が期待されるものである.三つ目は非線形移流項を伴う拡散方程式の初期値問題の解の存在に関する研究である.この問題は質量保存則を用いた時間大域挙動に関する研究が多くなされているが,本研究では時間局所解が存在するための十分条件として自然な範疇で問題を取り扱った.本年度は非線形項付き多孔質媒質方程式の解の存在についての研究成果発表を積極的に行い,本研究の進展について情報発信に努めた.来年度以降は本年度までに得られた成果を基に,研究主題である非線形境界条件に関数r研究成果を得るように努める.
2: おおむね順調に進展している
本研究課題の進捗状況は現段階においては概ね順調であると言える.計画作成当初予定していた順番とはやや異なるが,解決可能でありそうなテーマをテンポよく設定し,論文作成,投稿まで行えており,総合的な視点で見れば研究は期待通りの進展を見せていると考えている.本研究課題の主眼の一つである,非線形境界条件付き拡散方程式に関する研究が予定よりやや進展を見せておらず,来年度以降に本格的な進展があることを期待している.しかしながらこの問題について進展があまりないことは想定外というわけではなく,この問題が想定通り難しい問題であることを反映しているからだとも考えている.
非線形境界条件付き拡散方程式の解の存在理論を完全に整備するためには,境界条件に由来する非線形性を評価するための不等式を整備する必要があるため,今後はそちらの研究と併せて研究を推進する予定である.最近は境界条件の置き方自体に関する考察を行っており,場合によっては近年盛んに研究が進展している,動的境界条件付き放物型問題との関連を研究する必要があるかもしれないと考えている.いずれにしても,境界の幾何的性質と解の存在の関係を明らかにしていく上では領域の幾何的情報を含む不等式の研究の推進が前提となる.この点について次年度以降優先的に取り組んで課題解決に当たる予定である.
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
Communications on Pure & Applied Analysis
巻: 19 ページ: 677~697
10.3934/cpaa.2020031
Journal of Mathematical Analysis and Applications
巻: 484 ページ: 123721~123721
10.1016/j.jmaa.2019.123721
巻: 482 ページ: 123526~123526
10.1016/j.jmaa.2019.123526