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本年度は昨年度までに遂行しきれなかった研究課題を中心に研究をおこなった．主に，冪乗型の非線形項を伴う完全非線形放物型方程式系の非負値時間大域解が存在するための十分条件を考察した．既存の結果では主要項の楕円性が異なる方程式系に対する研究成果はほとんどないため，新たな研究対象として良いものであると考えられる．また，先行研究では方程式系ではなく単独方程式を扱っていたため，方程式系であることで生じる新たな困難を克服するために新しいアイディアが必要となった箇所がいくつか存在する．
本年度に得られた非負値時間大域解の存在に対する条件は楕円性を表す（方程式系の二つの）楕円定数の比に関係している．このことは大域解の存在を示す際に構成した優解に反映されており，この点を克服した点はひとつの成果であると評価する．この研究で得られた成果は学術論文としてまとめ，国際学術誌に投稿し，掲載された．また，いくつかの研究集会で講演を行ったり，討論するなどして成果の普及に努めた．
関連した研究として，時間大域解の非存在に関する条件が先に得られた十分条件と同じ指数で決定されるか否かについても研究を行ったが，これは方程式系であるが故の困難さを克服できなかった点の一つである．また，完全非線形放物型方程式の境界条件に関する考察，非有界な初期値をもつ完全非線形放物型方程式の粘性解的取り扱いのための新手法の研究などを行ったが，これらの研究は研究期間中には完成しなかったため，今後の課題となる．
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