研究課題/領域番号 |
18K13437
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
原田 潤一 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (00580169)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エネルギー臨界型熱方程式 / 接着法 / 接合漸近展開 / 微分方程式の解の爆発問題 |
研究実績の概要 |
非線形偏微分方程式では、初期値が滑らかな状態であっても時間経過とともに解の形状が崩れ、解の滑らかさが失われたり、解そのものの値が無限大に発散してしまうことがある。このような現象を解の爆発といい、それ以降の時間で解は定義されなくなる。非線形偏微分方程式の解は、滑らかな形状のまま時間無限大まで存在し続けるか、または途中で爆発してしまうかのどちらかである(時間無限大爆発もある)。滑らかな形状の解というのは比較的取り扱いやすいため、爆発解の構造や仕組みを調べるとことは微分方程式の解のパターンを調べ上げることと等価であると申請者は考えている。このような問題意識の中で、本研究ではエネルギー臨界型熱方程式と呼ばれる型の微分方程式について解の爆発の仕組みについて調査した。この方程式の爆発問題については、2000年頃から幾つかの予想や、それに関する結果が報告されてきたが、解決するまでには至っていなかった。本研究ではこの問題に対して部分的な解答を与えることができた(空間六次元の場合)。またこの問題に対して、非線形項に摂動を与え、そのときの影響についても調べた。爆発解は摂動に対して、敏感に影響を受けるため、解の挙動も大きく変化すると予想していたが、予想通りの結果となった。この調査の中で、二つの非線形項をもつ問題ではそれぞれの非線形問題の解を繋ぐような新しい解が存在するかもしれないという発見があった(今後の問題)。本研究の特徴は接合漸近展開法と呼ばれる解析手法を応用している点である。接合漸近展開法は元々物理系の論文で発展してきた手法であり、より直観的に解の様子を記述することができるという利点を持つ。この手法は適用限界など不明な点が残るが、その点も含めて幾つか改善できたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空間六次元エネルギー臨界型熱方程式については、昨年度から調査してきたが、論文の形に仕上げ掲載が決定した。これについては予定通りに進んだ。2つの非線形項をもつ摂動問題については、本年度から調査を開始した。摂動項の増大度が線形増大度より大きい場合は、問題は比較的易しく、この場合についてはある程度わかり論文にまとめられそうである。摂動項の増大度が線形増大度より小さい場合は、問題がより複雑になることがわかった。これは想定外のことであった。現在計算中である。
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今後の研究の推進方策 |
摂動項の増大度が線形増大度より小さい場合のエネルギー臨界型熱方程式の爆発問題について、引き続き調査していく。昨年度に発見した事実を基に、爆発解の存在性について証明を与えていく。8月くらいまでに仕上げ論文投稿を目指している。この問題がひと段落したら、再度エネルギー臨界型熱方程式に戻り、先行研究を調査するとともに空間低次元の問題や非球対称問題などの新しい方向性への手がかりを探っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で予定していた出張が全てキャンセルとなったため。コロナが収まったら、出張旅費として使用する。
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