研究課題/領域番号 |
18K13438
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
間瀬 崇史 東京大学, 大学院数理科学研究科, 助教 (80780105)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 可積分系 / 離散可積分系 / 代数的エントロピー / Laurent現象 |
研究実績の概要 |
離散可積分系についての研究を、代数的手法による可積分性判定法という観点から行った。用いた主な道具は、特異点閉じ込めテスト、代数的エントロピー(次数増大)、Laurent性(Laurent現象)、既約性、互いに素条件(coprimeness)などである。 1. Laurent性を持つ差分方程式(Laurent方程式)の一般的な性質を調べた。Laurent方程式の中には、時間発展の途中でLaurent単項式(Laurent多項式環における可逆元)が出現するものがある。本年度の研究の結果、Laurent方程式が互いに素条件を満たす場合は、このような現象が決して起こらないことを示すことができた。さらに、これを用いることで、差分方程式が、あるひとつのよい領域においてLaurent性、既約性、互いに素条件をすべて満たすならば、任意のよい領域において、これらの3つの性質が成り立つということが証明できた。なお、同様の主張を2年前の段階で示してあったが、本年度の研究により、以前課していた不自然な仮定をすべて取り除くことに成功した。 2. 多次元格子上の方程式について、定義領域の形が解に与える影響を調べた。少し不自然な領域上で定義された具体的な方程式を、因子の打ち消し(特異点のパターン)という観点から調べた。具体的な方程式をいくつか調べたところ、境界付近において本来打ち消すはずの因子が打ち消さないことがあることと、境界から十分離れた領域内部においては本来のパターンと全く同じ打消しが起こっていることが確認できた。 3. 特異点閉じ込めのパターンから直接、方程式の次数増大を計算する手法について調べた。この手法はこれまで主に2階の常差分方程式に対して用いられていたが、今年度は、対象を偏差分方程式に拡張することを試みた。この手法を、特異点閉じ込めを通過する非可積分格子方程式のひとつに実際に適用した結果、正しい次数増大が得られることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの流行のため、他の研究者(共同研究者含む)との研究討議がなかなかできない状況が続いている。研究集会やセミナーなどはオンライン形式で開催されているものの、研究内容について細かい議論をするには向いておらず、対面での相談の機会がなくなったことを補えていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、離散可積分系について、代数的手法による可積分性判定法の観点から研究を進める。今年度、特異点閉じ込めのパターンから直接方程式の次数増大を計算する手法がひとつの偏差分方程式に対して成功したので、今後は、この手法を一般化することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年ほど出張が全くできない状況が続いていたが、ここ数か月で、徐々に研究集会を対面で行う方向へシフトしている。次年度には海外を含めた出張を計画しており、主にそこで研究費を使う予定である。しかし、最終的に出張の可否は感染拡大状況、国際情勢、日本政府の政策などに大きく左右されるため、実際に計画通り研究費を使うことができるかは不明である。
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