本研究では、ひまわりなどの植物が形成する螺旋模様に対する幾何学モデルのうち、フェルマー螺旋格子点列を含む一般のアルキメデス螺旋格子点列を母点集合とするボロノイタイリングにおいて、螺旋構造の分岐を示す円環状のパターン(結晶粒界)が七角形、六角形、五角形のボロノイタイルから構成されることやパラメータ曲線の分類およびその稠密性などの数理構造を明らかにした。さらに、一般アルキメデス螺旋格子のボロノイタイリングにおけるボロノイタイルの面積に関しては、螺旋点列の指数について、収束する場合と発散する場合に分類し、フェルマー螺旋点列の場合(指数が1/2の場合)に面積が円周率に収束することを示した。20世紀初頭から研究が行われてきた対数螺旋格子点列に関しては、回転対称性を有する点列のボロノイタイリングと円板充填のパラメータの分岐曲線の双対性やボロノイタイリングにおける退化系の四角形タイルの形状収束の問題について数学的な証明を与えた。葉序の幾何学モデルの展開として、複素力学系の分野で研究されている超冪乗点列に対して1つの収束するクラスタを持つ場合の最適点配置問題を考え、高精度な数値計算を用いて最適解を与えるパラメータ曲線の収束先に黄金比が関連することを数値的に示した。また、ショウジョウバエの複眼に関する研究では、細胞の同心円状の成長とその成長速度を導入した乗法重み付きボロノイタイリングの数値計算を行い、ボロノイタイルの境界線が複眼を形成する個眼の細胞境界と高い一致度を有することを示した。
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