研究課題/領域番号 |
18K13455
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
榊原 航也 京都大学, 理学研究科, 特定助教 (30807772)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Hele-Shaw 問題 / 構造保存型数値解法 / 基本解近似解法 / 一様配置法 / 曲率依存型配置法 / 点渦力学系 / 極小曲面 / 流体力学 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,基本解近似解法に基づいた簡便かつ高精度な数値計算スキームを構築し,それによりHele-Shaw流れ,点渦力学系といった流体モデルの性質を調べることにある.本年度は,以下のような結果を得る事ができた. (1)Hele-Shaw 問題に関しては,矢崎成俊氏(明治大学)と行った,幾何学的変分構造を保存する数値計算スキームの論文が出版された.磁性流体については,時間に依存する間隙を持つHele-Shawセル内における数値計算手法を確立し,スパイクパターンなどを数値的に再現できた.また,申請書に書いていた通り縦置きHele-Shawセル内を浮上する泡の解析にも取り組み始め,簡単な数理モデルの構築,ならびに数値計算による研究を開始した. (2)点渦力学系については,空間内に閉曲線の族が与えられたときに,その間を張る極小曲面と一意化を同時に計算する手法を考案した.まだ数値計算による確認はできていないが,従来の極小曲面の数値解析ではほぼ考えられることのなかった問題に対する処方箋を提示できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Hele-Shaw 問題に関しては,当初の目標であった,幾何学的変分構造を離散的にも保存する数値解法に関する論文を出版する事ができた.また,更なる発展課題である泡の浮上問題に取り組み始める事ができた.点渦力学系については,まだ「任意の」極小曲面上で計算することはできていないが,与えられた閉曲線の配置から極小曲面とその一意化を同時に計算する手法を考案する事ができた.これらを総合すると,「おおむね順調に進展している」と判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
Hele-Shaw 問題に関しては,磁性流体のスパイクパターンの研究を進めつつ,泡の浮上問題を考えていきたい.泡の浮上問題は,Navier-Stokes 方程式を用いた研究が盛んにされているが,それでも泡の変形メカニズムなどの本質的な理解には及んでいない.本研究により,「よりシンプルなモデルでありながら,泡の浮上メカニズムを本質的に理解する」ことを可能としていきたい.点渦力学系の研究については,昨年度までの研究を着実に推し進めていき,極小曲面および一意化の数値計算に実際に取り組んでいく.
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に繰り越しがあった分が多少のこてえしまったことにより,次年度使用額が発生している.情報収集や研究成果のために積極的に使用していく予定であるが,新型コロナウイルスの影響により,今年度の出張の多くをキャンセルせざるを得ない状況である.その場合,さらに翌年度に繰り越し,最終年度に更なる積極的な情報収集・発信に努める.
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