本研究は,基本解近似解法に基づいた高精度数値解析を進展させることが目標であり,具体的にはHele-Shaw問題と極小曲面の数値解析に焦点を当てたものである.本研究期間においては,Hele-Shaw問題に対する構造保存型数値解析(矢崎成俊氏との共同研究),3Dケーブルモデルの数値解析(中村健一氏,矢崎成俊氏との共同研究),双方向の等角写像の数値解析,空間離散全変動流の時間離散化(儀我美一氏,田口和稔氏,上坂正晃氏との共同研究),バイドメインモデルの解の漸近挙動の数値解析(奈良光紀氏,俣野博氏,森洋一朗氏との共同研究)等,多くの研究成果を挙げることに成功した. 最終年度となる今年度は,以下のようにいくつかの研究成果を挙げることができた. (1)下地優作氏,矢崎成俊氏との共同研究により,磁場の効果が入ったHele-Shaw問題に対する基本解近似解法による構造保存型数値解析を行うことに成功した.この研究の中では,本研究者が等角写像の数値解析を行う際に得た点配置の知見を応用することで,過去のスキームよりもさらに安定な計算を行うことができるようになった. (2)清水雄貴氏との共同研究をさらに推し進め,基本解近似解法による極小曲面(Plateau問題)の数値計算スキームをより洗練させ,近似曲面の存在,何かしらの極小曲面への収束証明を与えた.この数値計算スキームは高速に実行可能であり,そのために多数のランダムな初期値から計算を始めることで,例えばEnneper wireを境界とする極小曲面を3つ全て計算できることができるようになった.
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