研究実績の概要 |
昨年度に引き続き実施した研究内容について、個別の研究課題ごとに記載する。 (1) 精子の波形の違いの特徴づけに関する研究が論文として出版された[Walker, Phyal, Ishimoto, Tung & Gaffney. R. Soc. Open. Sci, 2020]。 (2) 前年度の課題として残っている3次元的な流れ場が存在する場合の粗視化モデルの妥当性について検証を進めた。バクテリア鞭毛のような螺旋状の物体の回転によって駆動される遊泳の問題に取り組み、ストークス方程式の直接数値計算で得られた複雑な物体周りの流れ場が、少数のストークス方程式の正則基本解の重ね合わせで表現できることを見出した。また、この簡潔表現で記述される流体相互作用による2体問題を考え、特にバクテリア間のpredetor-preyダイナミクスにおける流体相互作用の影響を調べた。得られた結果は、論文として出版された[Ishimoto, Gaffney & Walker, Phys. Rev. Fluids, 2020]。 (3) 弾性論と流体の相互作用を記述する一般的な枠組みについて考察を行った。特に、変形が微小な場合である、Lighthil-Blakeのsquiremrモデルをベースに解析を進めたが、物体の弾性変形に対して、流体に起因する推進速度の大きさは常にサブリーディングオーダーとなることがわかった。通常の摂動論的な理論的な枠組みでは、流体と弾性の結合問題を上手に表現できておらず、再考が必要である。 (4) また、物体の構造に起因する柔らかさと、周囲の流体運動が力学的な結合したelastohydrodynamicsについて、特に精子運動に関する過去の結果と近年の進展及び今後の展開に関する総説を執筆している[in prep.]。
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