本研究では、ケラトサイトやアメーバのような有界な領域が時間発展する数理モデルに着目し、それらのモデルに共通する界面運動方程式の特殊解の存在などを調べた。ここでは、特に空間2次元、3次元の高次元におけるパターン解析である、コンパクトな進行波解の存在と一意性に関する解析を行なった。昨年度までは、外力が法線ベクトルに依存する平均曲率流方程式に着目し、進行波解の存在と一意性について研究を行い、空間2次元、空間3次元以上の場合の解析を行い、対称性がある場合など、ある条件下において一定の成果を得ることに成功した。これらの結果は学術雑誌Transaction of the American Mathematical Societyに投稿して、受理された。また、昨年度は新しい試みとして、樟脳運動に関連する数理モデルへの適用などの考察を始めた。本年度は、樟脳に関連するモデルのモデリングに焦点を置いて、数値計算でコンパクトな進行波解が確認できるかを調べた。数理モデルは、Allen-Cahn方程式で構成されるある反応拡散系の特異極限として特徴付けることが出来ることを示した。また、数値計算結果から、パラメータの値を変えることで、円の形状を維持したものや、バナナ形状を維持したものが出現することを確認できた。現在は、その内容をまとめて専門誌に投稿する準備をしている。今後は、バナナ形状やその他の形状を持つ進行波解が存在するための条件を探すことで、樟脳のモデルやその他の関連する問題に色々と応用出来るようになると予想される。
|