研究実績の概要 |
3変数FitzHugh-Nagumo型反応拡散方程式における空間局在解(パルス解やスポット解)のダイナミクス、およびそのメカニズムを分岐理論の観点から明らかにする。本年度は前年度に引き続き、方程式に含まれるパラメータの符号がα>0, β<0 という条件下での空間1次元のパルスダイナミクスについて調べた。この条件下では、α>0, β>0 の場合とは異なり、 解のプロファイルが上下反転した2種類のパルス解が共存し、時定数を変えたときにみられるこれらの解の振る舞いも、パラメータγの符号によって変わることが詳細な数値計算により明らかになった。その理由を調べるため、パルス界面の運動を記述する3次元の常微分方程を導出し、分岐解析ソフトも援用してγの値を変えたときの分岐構造の変化を調べた。その結果、まずγ≧0 の場合は、進行パルス解の複合分岐がα>0, β<0 とα>0, β≧0 における解構造の違いに大きく関わっていることが分かった。またγ<0 では γ≧0 にはない新たな定常パルス解、および進行パルス解が出現することで、分岐構造が大きく変わることも分かった。これら縮約方程式から得られるパルス解の大域的な分岐構造をもとに、PDEでみられる上記の数値計算結果のメカニズムを説明した。これらの成果を、3月に開催された日本数学会2021年度年会(オンライン開催)において口頭発表した。また、α>0, β<0 という条件下では、2つのパルスから構成される連結パルス解が現れることが知られているが、数値計算の結果、3つ以上のパルスから構成される解も存在することが明らかになった。その解析を行うため、一般にN個のパルスから構成される場合の界面の運動方程式を導出し、N=3の場合で数値計算結果を定性的に再現することを確かめた。
|