• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

高密度粒子系の非局所性に基づく新しい連続体理論の展開

研究課題

研究課題/領域番号 18K13464
研究機関京都産業大学

研究代表者

齊藤 国靖  京都産業大学, 理学部, 准教授 (10775753)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード弾性体 / 音波特性 / 粘性効果
研究実績の概要

高密度粒子系の力学応答および音波特性について、分子動力学法を用いた数値シミュレーションによって研究を行った。まず、完全な結晶状態から徐々にアモルファス化する過程において、構造や力学応答がどの様に変化するかを調べた。具体的には、アモルファス化の指標であるランダムネスの増加に伴い、静的構造因子がどの様に変化するかを解析し、主に長波長側における著しい構造変化の様子を捉えることが出来た。さらに、剛性や粒子の接触点数など、いわゆるジャミング転移に関わる物理量の臨界スケーリングも調べ、ランダムネスの増加に伴ってスケーリング精度が上昇することを明らかにした。また、ランダムネスと固有振動モードの関係についても調べ、プラトー振動数の臨界スケーリングやランダムネス依存性を測定し、結晶とアモルファスの根源的な違いについて物理学的な解釈を与えた。一方、音波特性については、定在波の数値シミュレーションによる研究を行った。一般に、粉体などのマクロな粒子系では、弾性波の挙動は粒子間の粘性力に強く依存する。そこで、弾性を表すダイナミカル・マトリックスに加え、粘性を担うダンピング・マトリックスを運動方程式に導入し、アモルファス状態の高密度粒子系がどの様に弾性波のエネルギーを散逸しながら時間発展するかについて精密な数値解析を実施した。まず、音波の分散性により音速は波数あるいは振動数に依存した関数となるが、アモルファス系でよく知られている「音速の谷」が、粘性効果によって消失することが明らかになった。また、音波散乱の指標である散乱係数についても、従来のレイリー散乱が粘性効果によって変化し、粘弾性体特有の波数または振動数の2乗スケーリングに転移することが解った。これらの研究成果は学術論文として公表しており、プレスリリースも含め、社会に対して広く情報発信を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

最近の成果であるソフト粒子の拡散現象について、拡散係数の測定やジャミング転移点近傍における臨界スケーリングなど、定量的な数値解析を順調に進めている。特に、以前から知られていた粘性率の臨界スケーリングとの対応に着目し、慣性効果が無視できるオーバーダンプモデルや、連続・不連続シェアシックニングが生じる摩擦モデルを用いて、対応関係の有効性や普遍性を精査している段階である。また、輸送係数に対するグリーン・久保公式を念頭に時間相関関数の計算も進めており、ジャミング転移点をまたいで緩和時間や減衰の様子がどの様に変化するかに注目した数値解析も進めている。さらに、せん断下におけるリジッドクラスターの形成にも注目し、非アフィン速度の空間相関関数からクラスター直径を測定するなど、数値データの定量化に着手した段階である。また、今年度の研究成果であるアモルファス固体の音波特性の研究をさらに発展させ、粒子間に働く粘性力の効果とジャミング転移点との関係を明らかにするための数値計算も実行しており、「音速の谷」や散乱係数のスケーリング則がジャミング転移点近傍でどの様に変化するかを追究している。さらに、楕円体やダイマー粒子など、非球形粒子の固有振動モードに関連した理論解析も進めており、フロッピーモードを基礎とした新しい現象論の構築を目指す。また、補足的な内容として、アンダーダンプモデルを用いたソフト粒子の拡散現象を調べる数値計算および理論解析も現在進行中である。

今後の研究の推進方策

今後は非局所性に基づいたレオロジー研究をさらに進め、ソフト粒子系の粘弾性・弾塑性に着目した数値計算や数値解析および理論解析を行う予定である。例えば、せん断下における動的構造因子の解析から、輸送係数の波数依存性を調べ、特徴的な波数領域を特定することで、非局所性を表す長さスケールを解明したい。これらの解析において、せん断率や粒子の被覆率など、ジャミング転移に関わるパラメータを網羅的に調べ上げ、これまで知られていた粘性率の臨界スケーリングやリジッドクラスター形成との関係解明に努める予定である。また、音波特性と非局所性の関係解明にも着手し、中でも粒径分布が特徴的な多分散系の音波解析は優先度を上げて実行する予定である。また、外場を加えたソフト粒子系の強制振動など、物理学における基礎的な課題についても研究を行い、共鳴現象とジャミング転移との関係解明などは興味深いテーマであり、準備が出来次第、数値計算と解析を進める予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)

  • [国際共同研究] Delft University of Technology/University of Twente(オランダ)

    • 国名
      オランダ
    • 外国機関名
      Delft University of Technology/University of Twente
  • [雑誌論文] Sound damping in soft particle packings: the interplay between configurational disorder and inelasticity2021

    • 著者名/発表者名
      Saitoh Kuniyasu、Mizuno Hideyuki
    • 雑誌名

      Soft Matter

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1039/D0SM02018D

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Critical Scaling of Diffusion Coefficients and Size of Rigid Clusters of Soft Athermal Particles Under Shear2020

    • 著者名/発表者名
      Saitoh Kuniyasu、Kawasaki Takeshi
    • 雑誌名

      Frontiers in Physics

      巻: 8 ページ: 99

    • DOI

      10.3389/fphy.2020.00099

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Structural and mechanical characteristics of sphere packings near the jamming transition: From fully amorphous to quasiordered structures2020

    • 著者名/発表者名
      Mizuno Hideyuki、Saitoh Kuniyasu、Silbert Leonardo E.
    • 雑誌名

      Physical Review Materials

      巻: 4 ページ: 115602

    • DOI

      10.1103/PhysRevMaterials.4.115602

    • 査読あり / 国際共著

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi