研究課題/領域番号 |
18K13469
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 寿彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (80734350)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 量子鍵配送 / 量子暗号 / 装置不完全性 / 量子情報 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、なるべく性能を犠牲にせずに量子鍵配送の装置モデルをより現実に即するよう拡張し、実験によって確認できるデータを用いて安全性を保証することを目的とする。本研究課題で行うことは、現実との乖離が大きいモデルの仮定を乖離の少ない仮定に置き換えていくという作業であり、完全な解をいきなり目指すというよりは影響の大きなものから順次対処していくというものになる。本研究では、特に媒体として光を用いる場合における送信機と受信機に集中して研究を進める。 2019年度もパルス光源の光子数分布の問題を取り扱った。2018年度の結果により、出力が1モードの場合にノイズのない閾値型光子検出器を用いて光子数分布を厳密に推定する手法を開発したが、2019年度の研究によりこれを多モードの場合に拡張することができたため、その結果を論文にまとめている。 2019年度には、2018年度から研究していた差動位相シフト量子鍵配送方式(DPSQKD)についての論文も出版された。これまでのDPSQKDではパルス列をブロックに区切ってブロックごとに位相ランダム化を行うということが安全性を保証するために必要となっていた。しかし、ブロックごとでの位相ランダム化処理は実験的に負担であり、現実的に実装する上で障害となる。この論文では、ブロックごとの位相ランダム化を行わない場合でも、安全性が示すことができることを初めて示した。またそれに加えて、光源に対する要求をなるべく少なくして安全性を示した。 他には、量子秘匿計算に必要な資源を量子鍵配送での解析手法を用いて低減する論文と、量子サポートノードを用いてこれまでの距離と鍵レートの関係の限界を有限時間でこえる量子鍵配送方式を提案し、その安全性を示す論文とが出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
受信機の動作速度の問題についてまだ出版されていないが、その他の研究が進展して論文が出版された。
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今後の研究の推進方策 |
受信機の動作速度と時間相関の問題について引き続き論文にまとめる作業を続ける。 これらに加えて、受信機側の光検出器に対する攻撃について検討をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で旅費が減ったため。
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