研究課題/領域番号 |
18K13470
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
越智 正之 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10734353)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / 波動関数理論 / 方法論開発 / 数値計算 |
研究実績の概要 |
本研究計画はトランスコリレイティッド(TC)法の開発およびその適用を目的としたものである。当該年度もそのコード開発ならびに適用を進めた。我々の開発したトランスコリレイティッド法の計算コードと、量子モンテカルロ法のコードCASINOとを組み合わせて、原子系への適用を行った。手法としては、Transcorrelated + variational Monte Carlo (TC+VMC)法とよばれるものにあたり、ジャストロウ因子とスレイター行列式をともに最適化する手法である。ジャストロウ因子として一般性の高いものを用いることで、ヘリウム原子であれば相関エネルギーの99%以上が取り込まれることがわかった。トランスコリレイティッド法の全エネルギーは、相似変換ハミルトニアンの非エルミート性ゆえに変分原理を満たさず、変分モンテカルロ法で評価される全エネルギーとはずれることが知られていた。しかしその差はジャストロウ因子を改善するほど縮まっていくことが確かめられた。また、トランスコリレイティッド法には通常の直交軌道を用いる形式と、双直交軌道を用いる形式があり、後者はBiorthogonal TC(BiTC)法とよばれる。TC+VMC法とBiTC+VMC法とで原子計算にどのような差がうまれるか、特に全エネルギーの値について量子モンテカルロ法で評価される値との差を調べた。またこれらの計算を実行するために、必要な数値計算上の改善(収束性の改善など)も随時、行った。これらの結果はいくつかの研究会で発表し、また学術論文についても現在、投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以前のTC法の研究ではもっぱらシンプルなジャストロウ因子が用いられていたが、原子系とはいえ複雑なジャストロウ因子を第一原理的に最適化することに成功した。また、そうして得られたジャストロウ因子で相似変換されたハミルトニアンの持つ性質についても調べることができ、多電子系に対する有用な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、我々の開発した計算コードを適用していく。より広い対象に適用することで、効率の良い電子相関効果の記述方法に関する知見を深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス対策のために各種研究会がオンライン開催となり、必要と見込んでいた旅費の支出が不要となったため。その一方で、研究に必要となる計算量は当初見込みよりも大きいことが明らかになりつつある。そのため次年度の早い時期に、研究遂行に必要となる計算環境をさらに拡充する予定である。
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