研究課題/領域番号 |
18K13471
|
研究機関 | 苫小牧工業高等専門学校 |
研究代表者 |
有馬 隆司 苫小牧工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (80735069)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 拡張された熱力学 / 非平衡熱力学 / 多原子分子気体 / モーメント方程式 / 体積粘性率 |
研究実績の概要 |
実在気体中の急激な時間・空間変化を伴う非平衡現象を記述可能な熱力学理論の構築とその波動伝播現象への応用を目的に研究を実施している。本年度は、多原子分子気体に対する拡張された熱力学に基づき、分子の並進・回転・振動自由度がもつ非平衡エネルギーの緩和に関して遅い緩和モードが存在する気体の研究を行い、以下の成果を得た。 1) 拡張された熱力学は、変数の数を増やすことで適用限界を広げることが出来るが、解析が困難となる場合がある。分子内部自由度の緩和時間が流体力学的時間スケールに比べて無視できる場合において、解析が容易な理論を拡張された熱力学の近似として導出した。これは、早い緩和モードと遅い緩和モードを特徴づける二つの温度をもつNavier-Stokes-Fourier理論に相当し、従来提案されていた二温度Navier-Stokes-Fourier理論を含むより一般的なものである。現在、この結果を論文としてまとめている。 2) 流体力学的物理量に加えせん断応力・熱流束の時間変化を記述する14変数の拡張された熱力学は、Navier-Stokes-Fourier理論に比べ強い非平衡現象に適用可能であるが、その適用範囲を調べるためにはより多くの変数を取り入れた理論が必要となる。そこで、近年発展している相対論的な拡張された熱力学の古典極限と整合する方程式系を基にして多変数理論を構成した。線形波動の解析により、14変数理論の適用限界も明らかにすることが出来た。本結果は論文として出版済みである。 3)体積粘性率に関連する遅い緩和モードが非線形波動におよぼす影響を調べるため、実在気体のノズル流れの解析をこれまでに提案した理論をもとに進め、従来理論との差異を数値的に確認した。ただし、本年度の解析では粘性・熱伝導を無視した場合に限られていたので、現在、より現実的な流れに近い条件での数値解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、理論構築・整備に関する研究が当初の想定以上に進み、14変数の拡張された熱力学理論の適用範囲の評価や解析が比較的容易となる近似モデルの提案にも成功している。一方、非線形波動の解析が予定よりもすこし遅れているため、早急にこの課題に取り組みたい。
|
今後の研究の推進方策 |
拡張された熱力学の整備が順調に進んでいるので、さらにこの研究を進め、単原子分子実在気体を含むより広い対象に適用できるように理論の深化を進める。同時に非線形波動伝播の解析を進め、実在気体中の大きな体積粘性率に伴う遅い緩和モードが波動伝播に及ぼす影響を定量的に調べる。現在進めているノズル流れの解析だけではなく、衝撃波の波面構造および定常熱伝導問題の解析にも取り組む。さらに、昨年度より理論解析を進めてきた非平衡状態にあるvan der Waals気体中の波動伝播特性を踏まえて、気液相転移現象のダイナミクスについての検討を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、発表を予定していた国際会議が新型コロナウイルス感染症の影響により延期になったことと、海外研究者との打ち合わせのための出張が出来なかったためである。 次年度使用額は、研究打ち合わせのための旅費および計算機環境整備費に使用する予定である。
|