研究課題/領域番号 |
18K13472
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研究機関 | 津山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
島田 悠彦 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 特命助教 (20751192)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有向パーコレーション / 層流・乱流転移 / 動的臨界指数 / 時空異方的スケール不変性 / 有限時間スケーリング / 非相対論的共形場理論 / 臨界レイノルズ数 / W代数 |
研究実績の概要 |
一次元乱流の層流・乱流転移を実験家と共同で解析し、特に短いパイプ流において臨界レイノルズ数を決定する、有限時間スケーリングの枠組みを構築した。乱流の種(パフ)に相当する生態系の被捕食者コロニーの連続モデルを各次元で数値計算し、乱流の実験データと比較した。いずれも本質的に有向パーコレーションの普遍性クラスと整合的であると示唆された。これらの結果を学会で発表した。 また、時間と空間のローレンツ対称性が破れた時空異方的なスケール不変性を持つ繰りこみ群の固定点に向けて、共形場理論のロジックの拡張を試みた。特に臨界指数など普遍的な情報を明らかにできるブートストラップ法に向けて進展が得られた。演算子積展開と4点関数を具体的に厳密に計算し、動的臨界指数z=2となる非相対論的共形場理論の例を構成した(学会発表予定)。 またソルボンヌ大学と共同で、Virasoro代数の対称性を拡大したW代数の族共形場理論におけるfundamental spin field(以下、基本場)のfusion を研究した。パーコレーションの解析の鍵となる、一径数族の基本場を同定し、代表者の異動後に論文にまとめた。この結果は、非ユニタリ共形場理論において階層的な指数関数的に弱いユニタリ性の破れを解析的に導くための手がかりとなると期待される。指数関数的に弱いユニタリ性の破れの普遍的な振る舞いは演算子積展開の係数に現れることが分かった。これをVirasoro代数の場合に具体的に計算し、W代数の場合はWKB法による予想をたてることができた。これらの結果は国際会議ICMP2018で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有限時間スケーリングでは、乱流の種であるパフの寿命が著しく長いため、短いパイプにおいて臨界レイノルズ数がぼけやすいことが予期される。臨界レイノルズ数を精度よく決定するためにはさらに工夫が必要である。一方、そのような系の特徴である時空異方的なスケール不変性を組み込んだ非相対論的共形場理論の研究では、意外な形で厳密解を構成することができた。さらに、パーコレーションのような非ユニタリ共形場理論の解析解で鍵となる基本場を、W代数の対称性をもつ一径数族共形場理論において同定することができた。W3代数では共形ブートストラップの数値研究が一歩進んでいたが、解析解からのアプローチとして一歩近づくことができた。W代数の一径数族において大きな進展が得られたのは、ICMP2018においてその提唱者である共同研究者と可能性を検討しはじめ、異動までの数ヶ月のうちに実際に基本場の解を構成できたことが大きい。
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今後の研究の推進方策 |
理論的と実験的の両面から研究を進める。パーコレーションの特徴である非ユニタリ性をもつ共形場理論で同定した基本場のfusionをさらに定量的に調べ演算子積展開における階層的ユニタリ性の破れのパターンと普遍的減衰を明らかにする。また、非平衡系の普遍性クラスについては、平均場近似に相当する動的臨界指数z=2を超えた理解を得たい。そのために非相対論的共形場理論における演算子積展開の結果を、層流・乱流転移により有向パーコレーション等の普遍性に近い他の動的臨界指数への拡張を試みる。実験的側面については、一次元乱流が持つパフの寿命が著しく長いという困難を有限時間スケーリングの枠組みをさらに工夫することによって克服したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度中の代表者異動のため執行に遅れが生じた。本年度は旅費等に使用する。
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