研究課題/領域番号 |
18K13474
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
山下 智樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 統合型材料開発・情報基盤部門, NIMSポスドク研究員 (60793099)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 結晶構造探索 / ベイズ最適化 / 進化的アルゴリズム |
研究実績の概要 |
結晶構造探索手法におけるアルゴリズムとして、新たに提案した選択型アルゴリズムであるベイズ最適化および近年広く利用されている進化的アルゴリズムのコード開発を行い、結晶構造探索ツール、CrySPYとして公開した(https://github.com/Tomoki-YAMASHITA/CrySPY)。広くユーザーに利用してもらえるようにCrySPYは無料で入手可能なPythonで設計し、オープンソースソフトウェアとした。また、ドキュメントおよびチュートリアルサイトも作成しウェブ上に公開した。CrySPYハンズオンセミナーも実施して、研究成果および作成したツールの普及に努めた。 CrySPYにおいて、ベイズ最適化と進化的アルゴリズムの両方が使用可能になったことにより、進化的アルゴリズムで作成した多数の構造候補からベイズ最適化を用いて探索候補を選択し、より少ない探索試行回数で安定構造を探索するハイブリッドアルゴリズムが技術的に適用可能となった。原子間ポテンシャルによる構造最適化を用いて、Siの安定構造探索を16原子および32原子の系において実行し、各アルゴリズムの探索効率を検証した。ランダムサーチ、ベイズ最適化、進化的アルゴリズムに比べ、ハイブリッドアルゴリズムが安定構造を見つけられる成功率が最も高くなる結果となり、高効率で安定構造を見つけることが可能な新しいアルゴリズム開発に成功したと言える。今後は原子間ポテンシャルのみならず、第一原理計算による構造最適化手法を用いて、Si以外の二元および三元系材料の探索効率を調査する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に挙げていた、結晶構造探索ツールCrySPYの公開およびドキュメントの整備、また、ベイズ最適化、進化的アルゴリズムおよびそれらのハイブリッドアルゴリズムの手法開発は共に順調に遂行することができた。 ベイズ最適化による構造探索では、候補となる初期構造が最適化後の構造から離れている場合、たとえ最適化後の構造が 最もエネルギーが低いグローバルミニマムであったとしてもその初期構造を優先的に選択することは困難をともなう。ハイブリッドアルゴリズムを開発するという研究計画の本筋からは外れるが、本研究においてこの問題に対処するための手法開発にも手をつけることができた。 初期構造がローカルミニマムからどれくらい離れているかを予測し、探索効率改善の補助を行う手法開発を試みた。予測モデルは、初期構造、最適化後の構造、およびそれらのエネルギーをある程度あらかじめ計算しておき、そのデータを用いてディープラーニングを行うことで構築する。まだ予測精度がそこまで高くはないものの、大雑把にではあるが、初期構造が最適化すればどれくらいエネルギーが下がるのかを予測することができた。さらに研究を進めれば、将来的に結晶構造探索の補助としてこの手法が使用できる可能性があることを確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は計画通り順調に進んでいるので、今後は当初の予定通り、ベイズ最適化と進化的アルゴリズムのハイブリッドアルゴリズムの探索効率の検証を行う。構造最適化には第一原理計算を用いて、NaClやY2Co17などの二元系やより複雑な三元系の系を対象に構造探索を行い、様々な系における構造探索のデータを得ることで経験やノウハウを蓄積する。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属プロジェクトより旅費が十分に賄えたため、余剰分が生じた。この分は次年度の旅費として使用する。
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