研究課題/領域番号 |
18K13475
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
桑原 知剛 (桑原知剛) 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, 研究員 (70757773)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 量子多体系 / 情報 |
研究実績の概要 |
(1) 有限温度の量子平衡状態の情報論的な複雑性を特徴づける量として最も頻繁に用いられる量として相互情報量が知られている。有限温度の相互情報量の境界則(area law)を定性的なレベルでさらにより強い不等式に改善できることを明らかにした。我々の結果は、量子平衡状態をテンソルネットワークを用いて表現する際のパラメータ数が従来考えられていたよりも大幅に減らすことができることを解明した。 (2)自然界を記述するハミルトニアン(エネルギー関数)の学習は物理学において、また量子機械学習において最も本質的な問題である。これに関連したサンプル複雑性問題は、「どの程度たくさんのデータサンプルがあれば、あるエラーの範囲でハミルトニアンを推定することができるのか」を問う。本研究では、量子ハミルトニアンのサンプル複雑性の問題を一般的かつ完全に解決した。 (3)局所的にエンコードした情報が時間発展によって、非局所的に拡散してしまい局所的な測定によって取り出せなくなる現象は情報のScrambingと呼ばれる。関連した最も重要な問題として、局所的な情報がシステムサイズのlog程度の時間で全体に拡散してしまうFast scramblingという現象が知られている。本研究では、Fast scramblingの非存在性を保証する最適条件を一般的に明らかにした。 (4) リープロビンソン限界に関する重要な未解決問題として、相互作用するボソン系が挙げられる。ボソン系は冷却原子系において普遍的に現れ、そのリープロビンソン限界は量子シミュレーターの性能解析において極めて重要な役割を果たす。一方で、相互作用がボソン同士に存在する場合には、リープロビンソン限界導出に必要な数学的な性質が破綻してしまうことが知られている。本研究では、ある自然な条件下においてリープロビンソン限界を導出することができることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までに7つの重要な未解決問題を解決することに成功し、全ての結果がトップジャーナル、及び、トップカンファレンスに採択された。 具体的には、Physical Review Lettersに3本、Physical Review Xに2本、Nature Communicationsに1本、Nature Physicsに1本の論文が主要著者として掲載された。 また、量子情報理論におけるトップカンファレンスであるQIPに3本、TQCに2本の口頭発表がアクセプトされた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるので、現在までに論文にまとめていない結果を論文としてまとめる。 また、次のステップに向けて幾つかの問題に対するアプローチを徐々に開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスのため、出張計画等々に狂いが生じたため。
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