研究課題/領域番号 |
18K13484
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
横山 知大 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (40708525)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ジョセフソン接合 / 多次元空間 / トポロジカル物性 |
研究実績の概要 |
研究計画は多端子ジョセフソン接合における(i)トポロジカル電荷の動的性質、(ii)人工トポロジカル物質としてのバルクエッジ対応とトポロジカル相発現条件、(iii)異方的超伝導体接合、の3つのサブトピックスで構成されている。本年度は主に(ii)について解析計算と実空間構造を考慮可能な数値計算で進めた。 ジョセフソン電流の定式として古崎-塚田公式があるが、これを多端子系への拡張し、解析的な表式を得た。解析計算の議論はまだ進捗途上で、具体的な物理描像を理解するまでには至っていない。数値計算の結果と対応させることで理解を深めたい。 数値計算では十字型の4端子系を想定し、ワイル特異点が現れる際の準粒子波動関数やジョセフソン電流との相関、特異点の発現条件を調べた。不純物のない非常にクリーンな接合の場合、実空間と超伝導体の位相差の双方で反転対称性がある点で特異点が得られる。不純物があると実空間上の反転対称性が破れるために、位相差の空間における特異点が対称な位置からずれる。その際でも、不純物による電子散乱が弱い場合にはワイル特異点が得られる。つまり、常伝導体に電子伝導が良い材料を用いることで、実験的にトポロジカルなワイル特異点を得ることができる。 また、数値計算において多端子ジョセフソン接合に形成される準粒子波動関数を調べた。2端子系の場合、超伝導体間の位相差に対して波動関数の空間構造はあまり変化しない。一方、4端子系の場合、波動関数が位相差に対して敏感に変化する。位相差を変調すると、波動関数が十字構造の腕に局在して他の腕とは結合しない振る舞いを示す。これら波動関数の形状は多端子間での各超伝導電流と相関すると予想され、現在その解析を進めている。位相差によって局在する準粒子を操作することができることが分かったので、パラメータの動的制御による特異的な物性の議論が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、研究代表者が所属している研究室では主に光物性を研究している。その光物性の研究テーマについても革新的な研究テーマに基づきて進めており、エフォートの割合を上手く調節できなかったために、申請時に想定していた進捗状況よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現在の研究状況についての課題、特に直流ジョセフソン電流と準粒子波動関数の空間構造との相関関係に関する考察を進める。2端子系では端子間のジョセフソン電流は1つだが、多端子系の場合はN*(N-1)/2個の電流が定義される。これらを1種のベクトル量と捉えることで視覚化した解析・考察を行う。また、本年度の研究では、ゼロエネルギー点であるワイル特異点に特有の波動関数を得ることはできなかった。これは当初の期待とは異なる。しかし、数値計算では真に特異点位置を数値計算で得ることは難しく、数値誤差が含まれる。ワイル特異点の線型分散性から、特異点の微小な近傍でジョセフソン電流ベクトルは急峻に変化するため、特異点そのもので議論することは数値計算からは難しいと考えている。そこで、特異点を内包する領域でのジョセフソン電流ベクトルの構造などを考察することで、トポロジカル相と多端子系でのジョセフソン効果の関係性にアプローチする。以上をまとめて論文執筆に取り掛かる。 さらに、(i)の課題に取り組む。また、米国物理学会において多端子ジョセフソン接合の実験を進めているグループと直接の連絡を取った。その際に本計画の拡張による数値計算を打診されているので、共同研究に発展させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果の進捗状況を考慮し、次年度以降により積極的に成果発表をすべきだと判断し、学会参加費としては不十分で荒れるが無理に使用することなく次年度予算に繰り越す判断をしました。
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