研究課題/領域番号 |
18K13484
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
横山 知大 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40708525)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超伝導回路 / ジョセフソン接合 / マイクロ波応答 |
研究実績の概要 |
前年度の研究では、多端子系も含めたジョセフソン接合における光励起による量子状態、およびマイクロ波応答制御を目的とした超伝導回路におけるマイクロ波伝導の研究に着手した。擬1次元の伝送路にジョセフソン接合に基づいた人工原子(超伝導量子ビット)が複数個配置して、放出される光子の時間波形制御とその放出光子の捕捉効率を議論した。特に、人工原子の準位間隔がマイクロ波応答と同程度の時間制御が可能であることに着目し、放出光子波形の動的制御を試みた。人工原子はキャビティを介した伝送路との結合系と直接の結合系の両方で評価し、前者では放出方向選択が3原子で可能、後者では90%以上の効率での単一光子捕捉が伝送路の途中であるにも関わらず可能となることを示した。この成果は量子情報のキャリアであるマイクロ波光子の損失の少ない伝送と捕捉として重要な成果であり、論文執筆中である。また、伝送路の記述に離散格子模型を適用することで2次元的なネットワーク化への拡張が可能となる定式化を完了させた。このネットワークの節は多端子系の接合となっており、散乱行列による手法などを組み合わせる必要がある。 以上の研究成果はジョセフソン接合を土台とする量子状態制御の研究であり、十分な進捗と成果であると考える。 その他に強磁性体とマイクロ波応答の研究も成果としてまとまっており、超伝導回路系との結合による量子状態制御に向けた研究に取り組むことが出来る。この研究内容も世界的に研究が進められている分野である。本研究も論文執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の進捗は十分な内容であった。論文として発表できる研究の進捗が複数の内容でまとまっているが、論文の執筆作業が追いついておらず、いまだに雑誌に掲載されていないため。しかし執筆状況は進行しており、複数の論文を投稿中、あるいは投稿直前である。
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今後の研究の推進方策 |
5本ほどの論文の執筆作業を完了させる。また、国際会議にてその成果を発表する。 また、多端子系の研究がさらに海外で進んでいるため、それらとの関連を調べつつ、強磁性体に着目して研究を進める。強磁性体を用いた2端子のSFS接合の場合、接合の自由エネルギーが安定する位相差が0からπに変化する0-π転移(あるいは0状態、π状態)が議論されるが、多端子の場合にはある端子間では0状態、別の端子間ではπ状態、という安定状態が期待される。つまり、端子数に応じてN-1個の(0、π)の選択になり、新しい多価、あるいは多重qubitの提案が1つの素子で可能になると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的な新型コロナウィルスの流行拡大によって多数の国際会議などが中止、オンラインに移行したため、旅費として計上していた予算に余裕が出ている。これを無理に別の項目で使用するのではなく、再開された国際会議や論文発表など、より有意義な予算執行にするため。
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