研究課題/領域番号 |
18K13484
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
横山 知大 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40708525)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジョセフソン効果 / 多端子系 / ワイル特異点 / トポロジカル相転移 / 非局所位相 |
研究実績の概要 |
多端子系のジョセフソン接合において創発されるトポロジカルに保護されたワイル特異点について、端子数を4つから5つ以上に増やすことで、制御パラメータが拡張される。この拡張されたパラメータとして、超伝導位相や透過率を制御し、ワイル特異点の対生成・対消滅によるトポロジカル相転移を議論した。超伝導端子と常伝導領域間に量子ポイントコンタクト構造を想定し、ゲート電圧によって5端子目の透過率を制御する。透過率がほぼゼロの場合、系は4端子系とみなせる。その際、5端子目の超伝導位相を外部磁場などで掃引しても特異点は他の位相差による3次元空間においてほとんど動かない。透過率を少しずつ大きくすると特異点が閉じた軌道を周期的にループする振る舞いを示す。ある程度の透過率となるとトポロジカル電荷が異なる2つの特異点の軌道が重なり、対生成・対消滅をともなう1つの軌道となる。通常、対消滅・対生成は周期的な位相差の3次元空間における同一のブリュアンゾーン(BZ)内で生じるが、我々は透過率や常伝導領域の電子伝導特性によって、隣接するBZにいるワイル特異点と対生成・対消滅する場合が起きることを明らかにした。その場合、軌道は開いた軌道となり、トポロジカル電荷の運動に対して異なるトポロジカルな性質が現れる可能性がある。 多端子系において、2つの端子間での電流位相関係は他の端子の超伝導位相によって変調され、位相差がゼロにおいても有限の超伝導電流となる異常ジョセフソン効果が現れる。常伝導領域が2つに分かれているT字型の3端子ジョセフソン接合において、2つの常伝道領域に形成されるアンドレーエフ束縛状態がコヒーレントに結合することで、異常ジョセフソン効果が現れることを明らかにした。さらに、その結合が強くなることで、非局所位相がπ付近になる際に、局所電流位相関係に0-π転移が現れることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
十分以上の進捗状況である。実験グループとの共同研究も始まり、多数のプロジェクトが同時進行している。論文化に遅れが生じているが、全体の進捗は概ね順調、あるいはそれ以上に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
トポロジカル電荷の対生成・対消滅に関して、制御パラメータによる動的(時間的)なトポロジカル相転移が議論可能になった。その際、トポロジカル電荷の軌道が対生成・対消滅をともないながら閉軌道になる場合と、隣接するBZの特異点と対生成・対消滅する開軌道になる場合がある。これらはトポロジカル「電荷流」を考えると、それぞれ渦電流、直線電流に対応する。この違いによるトポロジカルな検出を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の米国物理学会(APS March meeting)に参加するための予算繰越であったが、オンラインと現地でのハイブリッド開催であったために、現地参加による有効な議論や情報交換の期待が望めなかった。また参加に際しての日本国内での帰国制限も考慮して参加を見送った。2022年度には米国物理学会も含めて国際会議ので発表機会があるため、有効的な科研費使用のために再繰越を申請した。
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