研究課題
本研究では、軌道自由度をもつ強相関電子系における理論的な解析を行い、多軌道系特有の非従来型電子秩序に関する新しい物性を開拓することを目的とする。まず多軌道強相関系の一つであるフラーレン物質について、現実的なバンド構造を考慮した解析を行った。最終年度では特に強相関領域のモット絶縁体相に注目し、低エネルギー有効相互作用を構築した。その際、複雑な現実的電子遷移を考慮するため、コンピュータによって半自動的に有効モデルを構築する方法論を確立した。このモデルを解析することで、フラーレン特有のダブロン自由度が生み出す新奇な軌道秩序状態が実現することが明らかとなった。また、別の多軌道系であるUBe13のような重い電子系について、その特徴を捉えた補償金属的伝導バンド構造をもつマルチチャンネル近藤格子を解析した。その結果、複合体ペア振幅という特異な秩序変数で特徴づけられるフルギャップ超伝導状態を提案した。これに加えて、局在f電子の結晶場基底状態についても考察し、クーロン相互作用に基づく異方性の効果を詳細に調べた。ここで構築した方法論は広く多軌道電子系に対して適用でき、結晶中の電子間相互作用を効率的・効果的に表示する手法となっている。さらに本研究は対象を広げ、鉄系超伝導体で議論されているボゴリウボフ・フェルミ面という、超伝導状態でもギャップレスフェルミオン励起をもつ多軌道系に対しても解析を行った。相互作用の効果をこの特異な超伝導状態に対して考え、通常のフェルミ面を持つ系との差異を詳細に明らかにした。以上のように、本研究では非従来型の軌道秩序や超伝導状態について、現実物質の特徴を取り込んだ理論解析を行い、多軌道系特有の新しい物性を提案した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
固体物理
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PHYSICAL REVIEW B
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http://www.phy.saitama-u.ac.jp/~hoshino/