研究実績の概要 |
昨年度はLa1-yYyFeAsO1-xHxが示す二つの磁性相に対して中性子非弾性散乱の温度依存性を測定し、反強磁性相の磁気励起のエネルギー、波数、温度依存性を明らかにした(x=0 and 0.5, y=0)。反強磁性相の起源の違いを反映し特に温度依存性に大きな相違が見られた。x = 0のAFM1の場合、ネール温度に相当する140K付近で最も強い磁気散乱強度が得られた。これは理論的に予想されるスピン密度波機構とコンシステントな温度依存性が得られた。一方、x = 0.5では、ネール温度以下から磁気散乱強度が増大しはじめ、最低温にて最大強度が得られる結果となった。これはx = 0の遍歴磁性のモデルとは対照的で、AFM2が局在磁性であることを示している。本結果から、La1-yYyFeAsO1-xHxの超伝導相中に見られる二種のスピン揺らぎの由来を切り分けるには、波数依存性だけでなく温度依存性を測定することが有効であることが分かった。 次にベルト型高圧合成装置を用い、1200C、5GPaの条件下でx = 0.15, y = 0.3, 0.4, 0.5, 0.6, 0.7, 0.9の仕込み組成においてLa1-yYyFeAsO1-xHxの合成を試みた。広いイットリウム濃度範囲において本相の合成に成功した。また昇温脱離ガス分析、電子線マイクロプローブアナライザを用いて化学組成の分析を行った。イットリウム、水素の両濃度とも仕込み濃度に近い値が得られ、本件度もしくは来年度以降中性子非弾性散乱測定に臨む化学組成:(x, y)=(0, 0.85), (0.2, 0.85), (0.5, 0.85)を持つ試料の合成が可能であることを確認した。
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