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2018 年度 実施状況報告書

電子自由度におけるガラス化・結晶化の普遍性の検証

研究課題

研究課題/領域番号 18K13510
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

佐藤 拓朗  国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (60803749)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード電子ガラス相の探索 / マグネタイトの冷却速度依存性
研究実績の概要

本研究課題は、有機強相関電子系において近年観測された電子自由度のガラス状態に着想を得て、無機系初の電子ガラス相を探索し、有機・無機の枠を超えた包括的な電子ガラス研究を目指すものである。初年度は、無機電子ガラス相の候補物質として、3次元フラストレート系であるスピネル物質、具体的には電荷秩序物質マグネタイトFe3O4に着目し、電気抵抗および磁化測定からガラス的挙動の有無を調べた。
まず、Fe3O4バルク試料を用いて、0.1-10 K/minの範囲で冷却速度を変化させ、電気抵抗および磁化の温度依存性を調べた。ガラス相が実現した場合、120 K付近のverway転移と呼ばれる絶縁化が消失し、低温まで低抵抗状態が維持されることが期待される。しかし、測定の結果、Fe3O4バルク試料では、電気抵抗、磁化ともに、冷却速度依存性は全く示さず、120 K付近でverway転移が安定に生じることが確認された。急冷によって、電子自由度の結晶化転移が妨げられなかったことを意味している。
次に、FIBを用いて、Fe3O4の微小デバイスを作成し、電気抵抗測定を行った。一般に、試料サイズが小さいほど1次転移の抑制に必要な冷却速度が小さくなることが明らかになっており、微小デバイス化によって急冷電子ガラスが実現しやすくなると予想したためである。しかし、電気抵抗測定の結果、徐冷条件下においてもバルク試料の輸送特性が再現されなかった。デバイス加工の際に有意な乱れが混入してしまった可能性が考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、マグネタイトFe3O4を用いて、ガラス相の典型的挙動の一つである冷却速度依存性の有無を調べた。残念ながら、電気抵抗・磁化ともに冷却速度依存性は観測されなかったが、少なくともバルク試料では、実験室で容易に実現可能な冷却速度の範囲内ではガラス化が生じないことが初めて明らかになった。

今後の研究の推進方策

今後は、マグネタイトのガラス相実現をめざし、2つの方向で研究を行う。まずは、バルク試料を用いて、ジュール熱を利用した超急冷法を適用する。この方法により、従来の冷却速度に比べて数桁早い冷却速度が実現可能になる。超急冷法によって、バルク試料でガラス相が実現するかどうかを確認する。2つ目は、微小デバイスの質の向上である。数10μmの比較的大きなデバイスを用意することで、FIBによって乱れが混入する領域を、試料の一部に抑えることができ、全体としての輸送特性はバルク試料のものを再現すると考えられる。新たに作成するFIBデバイスを用いて、再度電子ガラス相の探索を行う。

次年度使用額が生じた理由

今年度購入したFFTアナライザの金額が当初の予定よりわずかに値引きされたため、次年度使用額が生じた。未使用額分は、試料への端子付けに必要な消耗品の購入に当てる予定である。

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公開日: 2019-12-27  

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