研究課題/領域番号 |
18K13523
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮澤 健 東北大学, 工学研究科, 助教 (00733726)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 核融合ダイバータ / タングステン / 高温照射 / 照射後微細組織 / 照射硬化 / 照射後引張特性 |
研究実績の概要 |
本研究では、原子炉による中性子照射に加えて加速器によるイオン照射を相補的に取り入れることで、タングステン(W)及び先進W合金の耐照射特性を評価し、原型炉における長期運用における材料劣化を予測することを目的としている。 中性子照射には米国オークリッジ国立研究所のHFIRを用いて、W及び先進W合金の照射後試験を実施することで、Wバルク材の強度特性と損傷組織の関係性を明らかにする。照射によるW材料の劣化メカニズムを明らかにするとともに、先進W合金の耐照射特性を評価する。2019年度では再結晶温度域における高温照射における照射後引張特性を評価した。1000℃照射ではほとんど硬化せず、むしろ引張強さは減少し、伸びが増加する傾向があった。高温照射中においては回復と再結晶が進行したため、それらによる強度減少と照射欠陥クラスターの生成による照射硬化が均衡することで、強度が増加することなく、延性が保たれたと考えられる。 イオン照射にはダイナミトロン加速器を用いて、Wの損傷組織発達を明らかにする。原子炉での中性子照射実験では、国内での照射実験の機会が無いのが現状である。そのため、照射温度と照射量を系統的に変化させた損傷組織発達の理解及び材料劣化予測のための基礎的な知見を得るためにプロトンによる照射手法を取り入れた。2019年度では、Wの再結晶温度である1300℃付近におけるプロトン照射を実施して、硬化量と損傷組織の相関性に関する基礎的な知見を得ることを目的とした。高温照射のプロトン照射材では、粗大なボイドが観察された。ボイドのサイズは大きいが数密度は小さかったために、照射硬化への寄与はほとんど無いことが分かった。1000℃を超える照射温度では、照射欠陥の回復段階で言うところのステージVに相当し、不安定な微細なボイドは消滅し、安定な粗大なボイドのみが生き残ったものと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度では1300℃における高温プロトン照射実験に成功し、損傷組織と硬化量を評価した。今後は照射温度を系統的に変えて損傷組織の照射温度依存性を明らかにする。そのために2019年度の照射実験の知見と実績を基に照射ステージ(試料フォルダーの構造、温度測定器など)を改良することで、温度計測精度を高めて損傷組織の照射温度依存性を得ることができる見込みを得た。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、プロトン照射実験の照射温度を系統的に変化させて損傷組織の照射温度依存性を明らかにすることで、これまでの成果を含めて中性子照射及び自己イオン照射との類似性と相違性に関する課題を整理して、Wにおける損傷組織発達に関する知見を得る。また、中性子照射環境下における核変換元素(主に、レニウム(Re))の影響を評価するために、W-Re合金のプロトン照射実験を行う。Re元素の欠陥集合体形成とReの偏析・析出挙動に及ぼす影響を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月の学会に参加するための旅費を計上していたが、学会が中止になったことから次年度使用額が生じた。次年度使用額については、研究成果発表として2020年度の学会参加旅費として使用する計画である。
|