研究課題/領域番号 |
18K13525
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
釼持 尚輝 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (80781319)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁気圏型プラズマ / 自己組織化 / 熱・粒子輸送 / 核融合 / トムソン散乱計測 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、天体磁気圏が高ベータプラズマを自発的に閉じ込めるメカニズムを解明するため、RT-1装置を用い自発的に形成される高ベータプラズマの熱・粒子特性を明らかにすることである。局所電子温度・密度分布を非接触・不干渉かつ幅広い温度密度領域で計測できるレーザートムソン散乱計測やイメージング計測のトモグラフィー法は、本研究目的である、高ベータプラズマの局所計測を基にした輸送の議論に最適である。令和3年度は、本研究により内向き拡散のメカニズムについて得られた以下に示す2つの新しい知見に関して取りまとめ、国際会議および国際誌で報告を行った。 (i)深層学習を用いたトモグラフィ法をライン比分光イメージング計測に適用し、内向き拡散により自発的に形成されるピークした密度分布を詳細に可視化した。内向き拡散によりコイル付近の高磁場領域にピークした密度分布が形成されていることが明らかになった。加えて、これまで三視線の干渉計から推測されていた密度分布よりもよりピークした分布がフラックスチューブに沿って存在していることが示唆された。 (ii)放電中に中性ガスを入射することで、ピークした密度分布が再構成される際に低周波揺動が励起されることを発見し、揺動の時空間構造の詳細計測から以下の3点が明らかにした。 (1)内向き拡散中には1kHzの電子反磁性方向に伝搬する揺動が発生し、内向き拡散が終了しピークした密度が形成された後は1kHzの揺動は消え、イオン反磁性方向に伝搬する0.7kHzの揺動が支配的になる。 (2)電子密度の上昇に伴い、低周波揺動の強度とトロイダル方向の位相速度が上昇するが、プラズマ圧力への依存性は低いことから、低周波揺動を駆動する自由エネルギーは密度分布の再構築であることが示唆された。 (3)揺動の伝搬方向が密度分布形状に依存することから、ドリフト波不安定性との関連が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度の当初目標は、(1)これまでに明らかになってきた自己組織化プラズマの温度・密度分布、及び自己組織化を駆動する低周波揺動の時空間構造をもとに、密度の自己調整機構のメカニズム解明に取り組むこと、(2)本研究課題の結果の総括として、令和3年に開催される第28回国際原子力機関(IAEA)核融合エネルギー会議において研究成果を報告し、国際論文誌Nuclear Fusionに投稿することであった。 (1)に関してはコロナ禍の影響のため、実験の機会が大幅に減少し、(2)による報告後の追加実験・解析が進まなかった。 (2)に関しては当初の目標通り、国際会議報告及び国際論文誌投稿を完了できた。 上記2点の研究成果により、本研究課題はやや遅れていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度に第28回国際原子力機関(IAEA)核融合エネルギー会議及びNuclear Fusion誌で報告した内容を進展させ、実験および研究報告を行う。 具体的には、静電プローブアレイをRT-1装置内に設置し、低周波揺動の時空間特性をより詳細に調査することで、内向き拡散に与える低周波揺動の影響をより詳細に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響のため実験の機会が大幅に減少し、第28回国際原子力機関(IAEA)核融合エネルギー会議及び国際論文誌Nuclear Fusionによる報告後に必要な追加実験・解析が進まなかったため、次年度使用額が生じた。 コロナ禍の状況が改善次第、実験にかかる物品購入費、実験参加のための旅費、及び学会参加費として使用する予定である。
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