研究課題/領域番号 |
18K13526
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
吉田 雅史 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (80638825)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 核融合 / 負イオン中性粒子入射装置 / プラズマ / セシウムフリー / 負イオン生成 |
研究実績の概要 |
申請者らの研究グループにて見出したセシウム薄膜を用いずに負イオンを直接生成する新たな手法を負イオンビーム生成法として導入するために、水素正イオンの入射/引出条件、負イオン生成する金属の材料とその形状を含めた本生成法の水素負イオン化の物理機構を解明すると共に、負イオン生成効率の向上した収束性の良い負イオンビームの生成条件を探索している。本年度では、まず生成した負イオンの定量評価のためにコレクターを改良した。引出電極(EXG)直下にカップ型のコレクターを配置することで損失を抑制した。その結果、従来の平板コレクターで得られた負イオン電流密度よりも約3倍収集効率を向上させた。さらに最大の負イオン電流を引き出すための引出電圧条件を見出せた。他方、引き出された負イオンビームの分布計測も開始した。直径1mmのシングルコレクターを引出電極後方5 mmの位置で2次元的に挿引するもので、本生成法にビーム分布計測を適用したのは世界初である。引出条件として、PGおよびEXGへの印加電圧をそれぞれ+2 Vおよび+900 Vと固定して、その中間の制御電極(CG)への印加電圧を+2~+900Vまで変化させた。その結果、<+200Vで半値幅5 mm程度の収束性の高い負イオンビームが得られた。これはPC-CG間でプラズマの準中性を保つ効果に起因していると考えられる。+200 V以上では、半値幅はやや大きくなるものの、ビーム強度は2倍程度増加した。その結果は、上述の定量評価での結果と一致している。このことは、引出電圧を上げることで密度は増大することを示しており、実機の中性粒子入射装置(NBI)での引出条件(>数kV)を考慮すると、本生成法でもNBIでの条件で負イオン電流密度は増大することが示唆される。電極の孔構造を最適化することで、EXGでの損失を抑制して収束性の高い負イオンビームが得られると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、セシウム薄膜を用いないで水素負イオンを直接生成するための基礎過程を解明して、負イオンビームへの応用適応性を検討することである。初年度にて負イオン生成するプラズマ電極の金属材料としてアルミニウムを用いた場合の負イオン生成基礎特性を評価した。その結果、予定していた本生成法による負イオンを大量生成のための条件を見出せた。本年度は、負イオンビームの定量評価のためにコレクターを改良すると同時に、負イオンビームの分布計測を導入してNBI適用性について調査した。改良したコレクター(カップ型コレクター)により、これまでの負イオン/電子分離計測では不明だった引き出された負イオン電流密度を評価できるようになった。また、その際の引出し電圧条件を特定できたことは、当初計画した通りに進んでおり、この成果によって、本負イオン生成法における生成効率向上に向けた一環として、プラズマ電極(PG)の材質依存性の評価を進めることが可能になった。また、本生成法にビーム分布計測を適用したのは世界初であり、この結果によって従来の生成法と同様にNBIへの適用可能性も示唆できており、最終年度に向けて大きく研究を進展させることができると言える。
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今後の研究の推進方策 |
カップ型コレクターによって負イオンの定量評価が可能になった。しかし、本手法では一部の電子が混在してしまっている。そこで最終年度はまず、混入した電子除去のために、コレクター直前に電子抑制磁場を制御可能な構造を新たに製作する。磁場印加条件を調査して生成した負イオン電流密度の評価精度をさらに高める。この上で、負イオン生成効率の向上に向けて、本生成法のPGの材質依存性について進める。他方、PGの材質としてこれまでアルミニウムを用いた際に、負イオンを安定生成までに前処置として10時間以上のプラズマ照射が必要であった。この前処理条件を基に、さらに高効率かつ短時間で安定に負イオン生成可能な条件をアルミニウムだけでなく、他の金属材質も調査する。これにより、安定化に起因する表面物性値を明らかにする。これらの知見に基づいて、NBIへ本手法を適用する際に必要な条件を洗い出すとともに、さらに実装に向けた解決すべき課題について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
外部への研究発表や投稿論文作成準備が遅滞したためである。次年度使用額の使用計画としては、研究発表のための旅費および、論文投稿のための英文校正費ならびに論文投稿料として可及的速やかに利用する。
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