研究実績の概要 |
申請者らの研究グループにて見出したセシウム(Cs)薄膜を用いずに負イオンを直接生成する新たな手法を負イオンビーム生成法として導入するために,水素正イオンの入射や引出条件,負イオンを生成する金属の材料とその形状を含めた本生成法の水素負イオン化の物理機構を解明すると共に,負イオン生成効率の向上した収束性の良い負イオンビームの生成条件の探索,および負イオン生成量の増大化を目指している.初年度および昨年度の成果によって,引出電極(EXG)後方に引き出された負の荷電粒子のほとんどは負イオンで電子は負イオンの1割以下であること,10時間以上のプラズマ照射によって負イオン生成量が安定化すること,さらに負イオンビームは引き出し電圧を高くすると電流量は増加するものの高い発散性を有してしまうことが明らかになった.最終年度では高引き出し電圧条件下でも発散する負イオンの損失量を低減して評価するために,EXG直後にカップ型コレクターを設置して,負イオンの最大引出電流密度およびその時の引出条件を検討した.その結果,負イオン量が最大となるプラズマ電極,制御電極,およびEXGの各電極電圧は+2 V, +800 V,および+2500 Vであった.+2 Vは負イオンの生成量増大条件,後者2種の電圧は負イオンの引出条件である.このときの負イオン引出電流密度は,電子量を考慮するとプラズマの放電電力が0.7 kWの時に0.12 mA/cm^2となることが明らかになった.ITERなどで用いる大型N-NBIでの放電電力やプラズマ密度およびプロトン比を考慮すると,本研究グループで提案する負イオン生成法が,Cs薄膜を用いずに負イオンビームを生成する手法の一つとして有望視し得ることが見い出された.
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