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水素プラズマが照射されたタングステン壁における水素原子・分子のリサイクリング過程に焦点を絞り、分子動力学計算を進展させた。放出水素原子・分子に関して、特に、1. H/W依存性の解析、2. 並進・振動・回転エネルギー分布の解析、3. 振動・回転準位分布の評価の3つの点で進展があった。
1. H/W依存性の解析：水素原子・分子放出数のタングステン中の水素密度依存性を重点的に調べた。タングステン材の場合、炭素材と比して反射率が高いことがわかった。H/Wが0.04の場合、材料内部に存在した水素原子がはじき出されて放出される割合は反射する場合の2割弱である。H/Wの値が増加するに従い、はじき出しの割合は増加し、逆に、反射の割合は低下する。これは、入射水素のエネルギーが標的材中の水素に吸収されやすくなるためだと考えられる。H/Wの値が小さい場合、はじき出しによる放出の1割程度の割合で水素分子が放出される。また、H/Wの値が増加すると、水素分子の放出数は指数関数的に増加することも判明した。
2. 並進・振動・回転エネルギー分布の解析：反射する場合は、ほとんどの場合で入射エネルギーをそれほど失うことなく反射する。はじき出しにより放出する場合は、反射と比べてエネルギーは低くなり、数eVから数十eVの広いエネルギー範囲となる。分子として放出する場合は、数eV程度のエネルギーを有することがわかった。
3. 振動・回転準位分布の評価：放出水素分子の運動量およびエネルギーから量子準位である振動・回転準位を見積もる方法を確立した。分子動力学計算に用いたEAMポテンシャルは真空中に置かれた水素分子のエネルギーが不正確であった。そこで、より正確な水素分子の相互作用エネルギーを導入し、振動・回転準位を見積もった。その結果、基底準位だけでなく、比較的高準位の分子が生じていることが示された。
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