研究課題/領域番号 |
18K13531
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 陽香 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80779356)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / マイクロ波プラズマ |
研究実績の概要 |
大気圧プラズマは簡易な構成でプラズマ生成が可能であるため、様々な産業への応用が期待される。プロセス速度において最も重要となる化学活性種(ラジカル)供給量は、プラズマの密度とサイズ、電子温度により決定される。申請者はこれまでの研究で大面積表面処理用のメートル級長尺の高密度大気圧マイクロ波プラズマ源を世界で初めて実現した。しかし、高電子密度プラズマであったとしても、電子温度が低ければ生成されるラジカル量が少ないことがプロセスへの応用において問題となる。そこで、本研究では大気圧マイクロ波プラズマの電子温度制御による解離促進手法を確立し、高密度ラジカル生成を目的とする。本研究が成功すればラジカル供給量の制御による大気圧プラズマプロセスの性能の飛躍的な向上が期待できる。 2019年度においては、まず、分子ガスを添加してマイクロ波パルス放電プラズマの安定生成条件の探索を行った。その結果、添加量に依存して安定化の条件が大きく異なることが明らかとなった。また、希ガス放電より大きな電力を要するため、装置の加熱による熱ひずみがプラズマ生成の不安定化につながるという問題が発生した。そこで、プラズマからの受熱がどの程度あるかの調査を行い、それに対して十分な冷却能力を考慮した装置の設計を行った。また、高速ゲートICCDカメラを用いてパルス放電時におけるプラズマ挙動の調査を行うとともに、発光分光を用いて活性種生成量の調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では大気圧マイクロ波プラズマにおいて、パルス制御放電等を用いて電子温度制御することにより高密度ラジカルを供給し、表面処理プロセスを行うことを最終的な目的としている。 2019年度においては、マイクロ波パルス放電プラズマの特性の調査を計画していたが、安定生成できるウィンドウが狭く、統一された実験条件での放電維持が困難であった。その一因として、分子ガス添加による熱の影響で装置がひずむという問題があることが明らかとなった。そのため、プラズマからの受熱量の調査を行い、装置を再製作した。並行して、限定的な条件であるが、プラズマの挙動調査、発光分光を行った。以上のように、パルス放電の特性の調査は十分進んでおらず、当初計画より遅れている。一方で、分子ガスプラズマの安定生成には大きな電力を要するため、本装置においては熱のマネジメントが非常に重要であることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究において、パルス放電時の特性および熱のマネジメントの重要性が明らかとなった。 次年度においては装置の改良をおこない、当初計画通り、パルス放電条件に対する電子温度、電子密度の関係性について調査するとともに、ラジカル生成増加の最適条件を検討する。電子温度は制動輻射光から定量評価するとともに、放電ガスに難解離性分子である窒素または酸素を用いて、発光分光から解離の効果について定性的に評価する。プラズマ安定維持のために外部印加電圧による補助も検討する。 また、分子ガス添加プラズマを用いた応用実験を行い、放電条件と処理速度の関係性の調査を行うことを予定している。
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