本研究は、βジケトン類を用いた遷移金属に対するアトミックレイヤーエッチング(ALE)表面反応の解明を目的として、得られた知見から反応性プラズマによる磁性材料におけるプラズマ支援ALEプロセス開発の支援を目的としている。前年度までは、室温でヘキサフルオロアセチルアセトン(hexafluoroacetylacetone: hfac)および(acetylacetone: acac)アセチルアセトン分子の遷移金属表面における吸着状態をin-situ XPS分析により明らかにしてきた。本年度は、βジケトン分子を遷移金属表面に曝露した場合の遷移金属表面からの反応生成物の脱離過程を明らかにするため、清浄CoおよびCoO表面に対してパルス化hfac分子線照射を行い、四重極質量分析装置を用いて試料表面から脱離する生成物測定を行った。hfac分子線照射室の内壁からの影響を最小限に抑え試料表面からのみの脱離生成物を観測するために時間変調したパルス化hfac分子線生成装置を製作し、また、QMS に関しては、照射室との間に差動排気ステージを設けて照射室内の残留ガスによるバックグランド上昇を抑制した高感度な脱離生成物測定を行った。室温のCoおよびCoO 表面における脱離生成物物測定の結果、清浄Co表面からhfac分子が解離して脱離していることが明らかとなり、これまでに報告してきた清浄Co表面上でhfac分子が分解して吸着しているというin-situ XPS による表面分析の結果とも良く一致する結果が得られた。尚、これら研究成果は、応用物理学会にて2件の報告を行っている。
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