研究課題/領域番号 |
18K13534
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
川村 淳一郎 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 訪問研究員 (00814667)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 超対称模型 / ニュートリノ / ミューオン異常磁気モーメント / LHC実験 / 暗黒物質 / バリオン生成 |
研究実績の概要 |
本年度は主に、超対称標準模型におけるミラージュ伝達でのミューオン異常磁気双極子、アクシオンを用いたバリオン数生成、新しいヒッグシーノ探索方法ついて研究を行った。これ以外にも、ベクトル型フェルミオンによる拡張模型について研究を行った。 本課題の主題の一つであるミラージュ伝達において、2021年4月に新たに報告されたミューオン異常磁気モーメントの標準模型からのずれが説明できるパラメータ領域を特定した。特に、これまでミラージュ伝達でよく考えられてきた、モジュライ伝達とアノマリー伝達が同符号で寄与する場合でなく、逆符号で寄与する場合に、ずれが説明できる事を指摘した。また、LHC実験からの制限を鑑みるとRパリティが破れている可能性が高い事も指摘した。 最近提案されたアクシオジェネシスという、アクシオンの運動を利用した新しいバリオン数生成機構において、運動方程式を直接解くことでバリオン数等の宇宙的観測量をより厳密に評価する手法を開発した。そして、ニュートリノを生成するワインバーグ項を介してバリオン数が生成される、レプトアクシオジェネシスというシナリオについて、最小限の超対称なKSVZアクシオン模型に基づいて、具体的に宇宙論を解析し、実際にバリオン数と暗黒物質が説明できる事を示した。 LHC実験において、ヒッグス粒子の超対称対であるヒッグシーノを、モノ電弱ボソンシグナルによって有効的に探索できる事を指摘した。ヒッグシーノは暗黒物質の有力候補である事、その質量が電弱対称性の破れと深く関わる事から、最も重要な超対称粒子の一つと考えられている。しかし、従来考えられていたモノジェットを用いた方法では背景事象が多く、有効に探索する事が出来ていなかった。本研究では、ハドロンに崩壊するZ、Wボソンをモノジェットの代わりに用いる事で、背景事象を減らすことができ、より有効に探索できる事を指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に関連して、最新の実験結果を説明する超対称性の破れの伝達機構の解明、ニュートリノ質量項を用いたバリオン数生成機構における解析手法の開発、電弱対称性の破れの起源の解明に繋がるヒッグシーノ探索に対する新たな手法の提案といった、多岐に渡る成果を得る事が出来たため。 研究自体は順調に進展している一方、新型コロナウイルスの影響により予定していた出張が行えなかったため、研究期間を来年度まで延長し、予算を持ち越した。
|
今後の研究の推進方策 |
アクシオジェネシスシナリオに関して、開発した手法を他の模型にも応用する事でニュートリノ質量の起源との関連などを探っていく。また、ヒッグシーノ探索で提案した手法はこれ以外の新粒子に応用できる可能性があり、考察を進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響によって予定していた出張を行えなかったため、次年度に持ちこす。出張費及び物品の購入費にあてる。
|