本年度は主に、F理論に基づくニュートリノの物理、モジュラー対称性によるクオーク・レプトンの階層構造の説明、第4世代レプトンを含む新物理模型の電弱精密測定やLHC実験での検証可能性について研究を行った。特に、超弦模型の一種であるF理論に動機付けされた超対称標準模型の解析では、量子補正によってニュートリノが質量を持つ模型を解析し、ステライルニュートリノとの混合等との関連を調べた。また、モジュラー対称性によって、ニュートリノの大きな混合角や比較的小さな質量差を、他のクオーク・荷電レプトンの階層構造と同時に説明できる具体的な模型を構成した。 本研究計画を通しては、研究課題である超対称模型におけるニュートリノ物理に直接関係する、超対称フレーバー模型の構築やニュートリノ混合の研究に留まらず、最新の理論研究や実験結果を反映してより広範な研究を行った。例として、2020年に提案された、ニュートリノの非常に小さい質量を説明するシーソー機構を媒介として初期宇宙におけるバリオン数を生成するレプトアクシオジェネシスシナリオの解析方法を提案した。また、2021年のミューオン異常磁気モーメントの最新の測定結果を受けて、これを自然に説明する超対称性の破れの伝達機構の構成等も行った。 更に、本課題に関係して、ニュートリノの超対称パートナーであるスニュートリノや、暗黒物質候補であるヒッグシーノといった、検証が困難な超対称粒子を、電弱ボソンを含むシグナルを考える事で、現在稼働中のLHC実験で探索する手法を提案した。
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