| 研究課題/領域番号 |
18K13537
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| 研究機関 | 京都大学 |
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研究代表者 |
藤田 智弘 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD) (20815857)
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| 研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | 宇宙論 / 重力波 / インフレーション |
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| 研究実績の概要 |
本研究課題では初期宇宙からやってくる原始重力波の新しい生成メカニズムと、その性質を詳しく調べることが主なテーマである。本年度は以下の３つのトピックについて新しい研究を行った。(i) 初期宇宙に大量に存在する光子が宇宙磁場によって重力波に変換される過程 (ii) 重力子に質量がありその振幅が増幅されたときの観測的特徴。以下ではこの２つを概説する。
(i)光子が飛んでいるだけでは重力波は生じないが、静磁場中を飛ぶ光子は重力波を作ることは古くから理論的に知られている。その効果は極めて微小で現在の宇宙では観測可能なほどの重力波の生成は考えにくい。しかし、初期宇宙では非常に強力な磁場が存在した可能性があり、加えて莫大な量の光子があったことが分かっている。本研究では初期宇宙において宇宙磁場と熱化光子から作られる重力波を初めて計算し、現在においても極めて振動数の高い重力波として残存している可能性を指摘した。この重力波を観測できれば、重力波生成時、つまり初期宇宙に熱化していた自由度（＝粒子の種類の数）が推定できることも議論した。
(ii) 物質由来の重力波ではないが、重力理論が修正されていたときにどのような原始重力波が生成されるかも興味深い問題である。特に重力子が質量を持つMassive Gravity理論では、インフレーションで重力波が作られた後にその質量が小さくなることで、振幅が大きく増幅される可能性を私は共同研究者らと指摘していた。今回はそのような重力波は、修正されない重力理論（＝一般相対性理論）の場合と比べて、大きな非ガウス性という観測的特徴を持つことを発見した。その形や観測方法なども詳しく議論した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では当初の想定通り、初期宇宙に未知の物質が存在した場合に作られる様々な重力波を計算したが、２年度目となる本年度はより一般にこれまで考えられてこなかった過程によって生成される重力波を研究した。特に磁場によって光子が重力波を作るという過程は、古い教科書にも載っている既知の物理過程であり、何ら未知の物質や現象を必要としないにも関わらず、現在の宇宙では起きそうにもないということで忘れられていた。その過程を再検討し、初期宇宙でなら現在にも残るような重力波が生成されうることを指摘したのは、新規性のある研究になった。作られる重力波は、現存する重力波望遠鏡では感度がないほどの高周波数ではあるものの、高周波に感度を持つような観測装置の提案・開発も進んでいる。将来的には、重力波天文学が伝統的な光の天文学と同様に幅広い波長帯に渡って観測をおこないような分野に成長していくであろうことを鑑みれば、それに先んじて未検証の波長帯にどのような重力波源があるのか調べておくことは、そのような新しい波長帯の研究・実験を踏み出そうとする実験・観測家のモチベーションにもなり、有用であると考えられる。
また本年度は私自らが在籍したことのない、中国や日本東北部の研究機関に在籍する共同研究者を得て共同研究が行えたことも今後に対する好材料である。
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| 今後の研究の推進方策 |
まずはすでに着手しているSU(2)ゲージ場起源の重力波の非ガウス性の研究を完成させたい。非ガウス性の中でも、３点関数の計算はすでに完了して論文にしてあるものの、４点関数は未だ誰も報告していない。SU(2)ゲージ場は３点相互作用だけでなく、４点相互作用までを持つことがよく知られており、それに連動して重力波の４点関数はこれまでになく大きいものが生成されることが予想される。計算は複雑を極めるものの、粘り強く取り組んで完成させたい。
他方、原始重力波を生成する他の物質としては、SU(3)ゲージ場も研究しておきたい。素粒子標準模型に含まれるゲージ対称性にはU(1), SU(2), SU(3)があるが、SU(3)ゲージ場だけはそれが作る原始重力波が研究されていない。これまでの研究で、U(1)とSU(2)はそれらが生成する原始重力波にかなりの相違点が見られることが分かっており、SU(3)でも新しい特徴を持った原始重力波が作られると予想される。
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