研究実績の概要 |
本研究では、中間子が原子核に束縛された中間子原子核を対象とし、将来の中間子原子核研究を見据えて、10年後に得られるであろう実験の系統性と実験データの精密化を考慮した中間子原子核の理論的探究を行うことを目的としている。 今年度は昨年度に引き続きJ-PARCで行われた反K中間子ビームを用いた4He,3Heに対するK中間子原子の精密測定に関する理論計算を行った。得られた実験データを元にK中間子と原子核間の相互作用の情報を引き出すことを試み、束縛状態をKlein-Gordon方程式を解くことで得た。4He, 3Heの密度分布関数は少数多体系計算で得られた精密なものであり, また, 電磁相互作用としてCoulomb 相互作用に加えて, 真空偏極の効果を表すUehlingポテンシャルも考慮した。そして, 強い相互作用としては, これまで得られているK中間子原子の実験データを広く再現する2つの相互作用に加えて, 通常原子核密度における相互作用の強さをパラメータとして実験データを再現するパラメータセットを求めた。その結果, 実験データを再現するようなK中間子-原子核間相互作用は1つに絞ることはできなかったものの, K中間子原子状態は原子核内部の相互作用の強さではなく, 原子核表面近傍の相互作用の振る舞いが重要であろうということが再確認できた。
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