研究課題/領域番号 |
18K13552
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
本多 良太郎 東北大学, 理学研究科, 助教 (30748877)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | FPGA / DAQ |
研究実績の概要 |
本研究は大別すると2つの開発項目に分けられる。1つはFPGAによる波形デジタイズ(ADC実装)の実装であり、もう1つはデータストリーミング(転送)技術の開発である。本年度は予算の関係から、先に転送技術の開発を行った。データストリーミングにおいては、従来のトリガー型DAQとは異なり、データがとめどなくやってくる。それをある程度の同時刻性を担保しつつ遅滞なく処理し続けなければならない。 30年度は汎用FPGA基板であるHadron universal logic (HUL)moduleに高負荷でも安定してデータを転送しつづけるための技術実装を行った。具体的には次のような技術を開発した。非同期通信を行うモジュール間で、疑似的にタイミング同期を行うための「ハートビート」の導入。FPGA内部でノイズや余分なデータを取り除くためのデータフィルターの実装。データフィルターの実装にあたっては、時間的に相関のある2つのデータをリアルタイムでペアリングし、その結果を元にデータを削除するかどうかを決定する方式をとった。 これら開発した技術の性能試験を行うために、東北大学電子光理学研究センターにおいて試験実験を行った。実験ではシンチレーションファイバー検出器の信号を、開発した技術を用いて実際にデータストリーミングし、HULが持つデータリンクの帯域リミットである1Gbps付近であっても、ハートビートが破たんしない、フィルターが正常に動作する、ということを確認した。これによって、ストリーミングDAQを実現する上で必要な基幹技術である、転送部分の開発を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
30年度に行った事柄は本来31年度に実施するはずであった研究計画である。研究計画を入れ替えた理由は、30年度に交付された予算額が予定していた開発を行うためには不十分であったためである。31年度はデータ圧縮とデータ転送部分の開発が主目的であったため、おおよそ達成できたといえる。計画段階ではデータ量を抑えるために圧縮技術を開発する予定であったが、圧縮ではなくフィルターによってデータ量を削減することにグループの方針を切り替えたため、それに対応した技術を実装した。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように30年度では31年度の研究計画を先に遂行したため、31年度ではFPGAによるΔ変調型ADCの実装を行う。 本年度はまず、研究実績の概要で述べたHULを用いて1ch(クロック位相が1つ)のΔ変調ADCの実装試験を行う。これは、簡単な環境から始めることで、原理の部分をきちんと理解し、次に開発する複雑な基板でのトラブルを避けるためである。HULへΔ変調型ADCを実装するにあたって、簡単な入力補助基板を製造する。同時に、電子回路シミュレーションによって、実装したADCの性能がシミュレーションとどの程度一致するかを調べる。これによって、性能を損ねている物は何であるかを明らかにする。 次に、目的とする1つの信号を8相のクロックでサンプリングするΔ変調型ADCの開発を行う。これには専用の回路基板の開発が必要となる。年度の後半には回路基板の開発に着手する。納品後はΔ変調型ADCの実装を行い、有効ビット数、量子化ノイズ、波形の再現性等について、サンプリングを行うクロックのスピードに対する依存性を明らかにする。 最後に実際にMPPCの信号を入力し、どの程度のエネルギー分解能が得られるかを明らかにする。
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