我々はJ-PARC高運動量ビームラインにおいて、Λp散乱実験を通してΛN間の反対称LS力の起源を明らかにすることを目標にしている。本実験では液体水素標的周辺を、シンチレーションファイバー検出器で囲うことにより、液体水素標的内で生じたΛp散乱の散乱陽子を検出する。この検出器ではシンチレーションファイバー内のdE/dxの情報が必要である。一方、本実験ではデータストリーミング型のDAQシステムの導入が進められている。そのため、ストリーミング型DAQに対応した波形デジタイザの開発が必要となる。 本研究ではFPGAを用いた波形デジタイザの実装を行うための試験基板を開発した。本技術ではFPGAの差動入力ピンへ直接波形を入力する専用の基板が必要となる。本回路はHadron universal logic moduleのメザニン基板であり、1つの波形を8つの差動入力ピンへ分割して入力することができる。FPGAファームウェア側では入力波形をそれぞれ位相の異なる8つのクロックでサンプリングするΔ変調型ADCを実装した。 また、FPGAファームウェア内部のデータフローについても研究を行った。本回路では、J-PARCの遅い取り出しに対応したFPGAファームウェアが必要である。そのため、本研究ではheartbeat frameと呼ばれる特殊なデータをデータ列に埋め込むことで、ビーム取り出しからの時間を高いダイナミックレンジで測定している。そのような機構を埋め込んだ際にシステムとしてどの程度のスループットが得られるか、またデータが詰まる箇所はどこであるかを明らかにした。
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