研究実績の概要 |
本研究では、x線バーストでの元素合成において重要な反応の1つである26Si(α,p)29P反応の断面積の直接測定と間接測定の2つの実験を計画し、2022年には直接測定をまず完了させることができた。実験は、理化学研究所の加速器施設において東京大学CNSが運営する低エネルギー不安定核ビーム分離装置CRIBにて行った。コロナ禍において海外から日本への入国が原則認められていない時期だったので、実験の共同提案者である韓国のSungyunkwan大学のグループは不参加となった。限られた時間的・人員的条件下ではあったが、現地に来られなかった海外の実験参加者のために、ZoomやYouTube Liveなどを通してオンライン解析を分担したり、トラブル時に解決法を議論するなど、円滑に実験を進められた。この実験のために、事前に開発・性能評価をしていた、高冷却性能の二次ビーム生成標的を使用し、CRIBにおける過去最大強度の26Si不安定核ビームを生成することができた。さらに、検出効率を高めるために、CRIBにおいては最多の検出器数を使用し、増大したデータ量を確実に処理するため、データ収集系も一新するなど、新しい技術を導入しつつ質・量ともに高い実験データを取得することができた。実験中のオンライン解析では、共鳴散乱由来のα粒子や、(α,p)反応由来の陽子が観測され、目的である原子核反応イベントの存在を確認した。実験後も定期的にオンラインミーティングを開きつつ、データ解析を進めている。データ解析は、主に東大CNS山口研究室の学生と韓国のグループの学生らが進めており、それぞれ修士論文、博士論文のテーマとして解析が完了しつつある。結果として、26Si(α,p)29P反応断面積は統計モデルから予想されるものよりも2桁ほども小さいことが見えてきており、X線バーストにおける光曲線への影響も示唆される。
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