研究実績の概要 |
次世代宇宙マイクロ波背景放射観測実験Simons Observatoryのscience forecast paperを出版した。この際、Simons Observatoryで我々が目指すべき科学目標を設定し、それに必要な感度・周波数・観測ストラテジ・観測天域を決定した。具体的には6mの大口径のlarge aperture望遠鏡と0.5mの小口径small aperture望遠鏡を建設、wide surveyとsmall surveyを実施することを決定した。観測周波数は、前景放射であるダストとシンクロトロンを除去するために、27, 39, 93, 145, 225, and 280 GHzの6周波数で実施することを決定した。これらの決定に基づき、現在は装置・解析パイプラインの開発を始めている。 このような選択になったのは、今までの地上CMB観測実験の経験を生かして、真に現実的な実験装置・観測・解析のモデル化を行い、science forecastを行ったからである。私は今までの地上実験、QUIET, ACT, POLARBEAR, ABS, BICEP/Keck実験などのデータをもとに、より現実的な1/fノイズのモデル化を行った。その上で、南米チリでインフレーション起源の大角度スケールBモードを観測(tensor-to-scalar ratio, r)するためには、半波長板(HWP)の使用が必須であり、その際現実的にどの大角度まで観測できるかを検証した。ニュートリノ総質量測定等を目指している小角度スケール観測でも同様に、過去の実験(ACT, POLARBEAR)による実績をもとに、ノイズのパフォーマンスを検証した。その結果、Simons Observatoryではsigma(r)=3e-3, ニュートリノ総質量は30 meVまで測定可能であることを示した。
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