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2019 年度 実施状況報告書

次世代マイクロ波望遠鏡群で探るインフレーション起源重力波と宇宙の暗黒成分

研究課題

研究課題/領域番号 18K13558
研究機関東京大学

研究代表者

茅根 裕司  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (90649675)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード宇宙マイクロ波背景放射 / 観測的宇宙論 / 原始重力波 / 重力波 / ビッグデータ / 重力レンズ / インフレーション / 構造形成
研究実績の概要

次世代宇宙マイクロ波背景放射観測実験Simons Observatoryは、地上CMB観測における第3から3.5世代に位置付けられる実験である。昨年度出版したscience forecast paperでは、主に最初の5年間の観測を目的としたスタディを行った(normal plan)。同時に我々は、次の世代である第4世代地上CMB実験「CMB-S4」の準備を進めている。我々はSimons Observatory自体を容易に拡張できる様に設計しており、本年度はnormalの先として「enhanced plan」の検討を進め、様々なscience caseを前回から拡張した。CMB-S4に繋がるenhanced planでは、現在建設している望遠鏡群の数を増やすことで、sigma(r)=1e-3、ニュートリノ総質量は15 meVまで測定可能であることを示した。これらの検討成果を米国の「Astro2020 APC white paper」として報告した。
データ解析の準備としては、Bモード測定時における系統誤差の検討、高性能計算機(High Performance computing)での使用を前提としたパイプラインフレームワークの開発を進めた。後者については、開発を主導しているローレンスバークレー国立研究所(LBNL)に併設されているNational Energy Research Scientific Computing Center(NERSC)の研究者の協力のもと、東京大学で開発に関するワークショップ・ハッカソンを開催した。日本国内の多くのCMB研究者に参加していただき、好評を博した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

大口径望遠鏡(Large aperture telescope, LAT)一台と小口径望遠鏡(Small aperture telescope, SAT)三台の建設が始まっている。本研究が進めている解析ソフトフェアの開発に関しては、高性能計算機での使用を前提としたパイプラインフレームワークであるTime Ordered Astrophysics Scalable Tools(TOAST)の開発・習熟を進めている。同時に、TOASTと実際の観測データを解析する際に必要になる各種モジュールの開発を進めている。別の研究で進めている最新のマイクロ波望遠鏡実験であるSimons Arrayと連携して開発を進めている。何故ならば、二つの実験では検出器技術や変調方法など共通の箇所が多く、解析ソフトウェアの開発においてもシナジーが期待できるからである。
様々な科学検討を実施してきた中、共同研究者と共に新しCMB前景放射に関する研究を進めた(CMBシャドウ)。Simons Observatoryでは考慮する必要がないこと、一方、次世代のCMB-S4では検討の余地があることを示した。これらの成果を論文として報告する予定である。

今後の研究の推進方策

主な科学検討が一段落した現在、データ解析ソフトフェアの開発を更に加速させる。既に進めてきたTOASTの開発をNERSCの研究者らと共に進めるだけでなく、Simons Observatory用のデータ解析モジュールの開発を進める。特に、SAT望遠鏡による大角度スケール観測(主にインフレーション起源Bモード偏光観測に特化した)データ解析に使う予定である、「フィルター・ビンマップメイキング」パイプラインの開発を進めていく。その際、私もco-leaderの一人を担っているSimons Observatory内のPipeline working group、およびAnalysis working groupの各メンバーと連携し、時系列解析、マップ解析、パワースペクトル解析、そしてそれらを統合したパイプラインと、データを任意に分割して差分を取ることでブラインド解析を実現するヌルテストフレームワークの開発を行う。別のworking groupが作成する実験に即したシミュレーションデータ、更には最新のマイクロ波望遠鏡実験であるSimons Arrayの実データからのフィードバックを活用しながら、データの性質、サイズ、計算機コストを念頭に置きながら開発を進める。

次年度使用額が生じた理由

本年度予定した中規模計算機の導入を見送った。理由としては開発の初期段階であり、またNERSCおよびプリンストン大学の共同研究者が提供する、同規模の計算機を使うことで、この本年度に実施する必要があった開発が可能であった為である。一方でこれらの計算機を使い、実際作業を進めるにつれ同時に計算機を使用する人数、リソース、メンテナンスなどの面から、手元に計算機を導入する必要性を再確認するに至った。その為、改めて次年度に中規模計算機の導入を検討するものである。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2019 その他

すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] カリフォルニア大学バークレー校/カリフォルニア大学サンディエゴ校/ローレンスバークレー国立研究所(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      カリフォルニア大学バークレー校/カリフォルニア大学サンディエゴ校/ローレンスバークレー国立研究所
    • 他の機関数
      5
  • [国際共同研究] ケンブリッジ大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      ケンブリッジ大学
  • [国際共同研究] メルボルン大学(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      メルボルン大学
  • [国際共同研究] SISSA(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      SISSA
  • [国際共同研究] APC(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      APC
  • [国際共同研究]

    • 他の国数
      3
  • [雑誌論文] CMB-S4 Decadal Survey APC White Paper2019

    • 著者名/発表者名
      Abazajian Kevork、et al.
    • 雑誌名

      Decadal Survey APC White Paper

      巻: - ページ: -

    • DOI

      https://dx.doi.org/10.2172/1556957

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] The Simons Observatory: Astro2020 Decadal Project Whitepaper2019

    • 著者名/発表者名
      Maximilian H. Abitbol、et al.
    • 雑誌名

      Astro2020 Decadal Project Whitepaper

      巻: - ページ: -

    • オープンアクセス
  • [学会発表] CMBデータ解析―生データからパワースペクトル、宇宙論パラメータまで―2019

    • 著者名/発表者名
      茅根裕司
    • 学会等名
      京都大学高エネルギー物理学研究室セミナー
  • [備考] SIMONS OBSERVATORY

    • URL

      https://simonsobservatory.org/

  • [備考] CMB-S4

    • URL

      https://cmb-s4.org/

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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