研究課題/領域番号 |
18K13558
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
茅根 裕司 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (90649675)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 宇宙論 / マイクロ波観測 / ハイパフォーマンスコンピューティング / インフレーション / 重力波 / ビックデータ |
研究実績の概要 |
次世代宇宙マイクロ波背景放射観測実験Simons Observatory (SO)は、Simons Array実験などの現在進行中の第3世代実験と将来の第4世代実験である米国が主導するCMB-S4とをつなぐ実験である。SOは次の5ー10年間の間最高の感度を実現し得る。SOは世界規模の国際共同実験であり、建設はチリで行われている。そのため、世界規模のコロナ禍はSOの開発・建設全体に少なからず影響を与えている。そんな中にあっても、今年度も引き続きSO小口径望遠鏡(Small aperture telescope, SAT)によるBモード測定に向け、SAT BB pipelineの開発を中心とした解析準備を進めた。 私もco-leaderの一人を担っているSO内のPipeline working group (PWG)、およびAnalysis working group (AWG)の各メンバーと連携し、開発を進めてきた。特に、これまでに「フィルター・ビンマップメイキング」を使用した際に生じる「時系列プロセスで生じてしまうEモードからBモードへの漏れこみ」を除去する手法の開発および検証を行ってきた。本年度はより現実的なシミュレーションデータを他のPWGと連携しながら作成し、除去手法の実装と評価を行い、実際の使用に耐えうるパフォーマンスを実現できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SO SATによるBモード測定を実現するための、「SAT BB pipeline」の開発を行った。 特に、「フィルター・ビンマップメイキング」を使用した際に生じる「時系列プロセスで生じてしまうEモードからBモードへの漏れこみ」を除去する手法の開発および検証を行ってきた。必要なコンポーネントである「オブザーベーション行列」の生成、「解析的なコバリアン」の生成と「オブザーベーション行列による『観測』」、それらを「一般化固有値問題」として解く、得られた「固有ベクトルによる漏れ込み除去行列の作成」を開発及実装を行った。仮想的な観測を実施し、実際の使用に耐えうるパフォーマンスを実現できることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響も含めたSOの建設状況を踏まえながら、引き続きパイプラインの開発を進める。 特に「オブザーベーション行列」「オブザーベーション行列による『観測』」「一般化固有値問題」は計算機コストの高いコンポーネントである。これらの効率化のために、スーパーコンピュータやGPUを活用した実装・検証を進める。また、国際協力を通じてより現実的な観測をシミュレートすることで、実際のデータに近い「オブザーベーション行列」の生成を実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により旅費をはじめとした予算執行を計画通りに進めることが困難であったため。
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