研究課題/領域番号 |
18K13560
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 康博 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (80792704)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 有機液体TPC / ニュートリノ / 反ニュートリノ |
研究実績の概要 |
本研究では、超高精度での反ニュートリノ測定を可能にする有機液体TPCの開発を目指し、その原理検証試験を行うことを計画している。実現すれば、数MeVから数10MeVの反電子ニュートリノ反応に対し、高い位置分解能による高効率の背景事象除去や、イオン化電子の測定による1%レベルの高いエネルギー分解能での測定が可能になると期待される。これにより、将来において、従来の測定器の性能を超える精度での原子炉ニュートリノや超新星背景ニュートリノの観測を提案することを目指している。 このような測定器に用いる有機液体には(1)媒質内を電子がドリフトしやすいこと、(2)ドリフトした電子の液相から気相への抽出が可能であること、(3)シンチレーション発光すること、が求められるが、ここれらを全て満たす液体は現在のところ知られていない。そこで本研究では、候補となる有機液体に対し、上記の有機液体TPCを実現するために必要な基礎特性の評価を行い、検出器原理の検証を行う。 2019年度には本科研費で製作したテストチェンバーを用い、候補液体の一つである2,2,4-トリメチルペンタンの電離電荷量の測定を行った。装置のクリーン環境および測定手法の改善の結果、照射したNa22からのガンマ線に対しほぼ期待通りの電荷収集量を得ることに成功した。これにより、今後のより定量的な評価を本装置で進める見通しが立った。 本計画の概要および上記試験の結果について、「日本物理学会2019年度秋季大会」および「マイクロパターンガス検出器 (MPGD) &アクティブ媒質TPC合同研究会」にて報告を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研費で製作を計画していた評価用イオンチェンバーについてはほぼ完成し、有機液体を用いた測定を開始することが出来た。ガンマ線照射により得られた電荷収集量もほぼ期待通りであり、現在のところ大きな問題は生じていない。 一方で、測定手法の確立に時間を要したため、また、2019年度末に新型コロナウィルスの影響により実験室へのアクセスが制限されたことにより、シンチレーション発光量や電子の気相への抽出性能の評価については未実施であり、2020年度の実施を計画している。 以上のように一部に遅れは見られるが、総合的には順調に進展しており、全体として計画に大きな変更は無い。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、製作したイオンチェンバーを用い、有機液体の基礎特性の評価を進める。とりわけ、シンチレーション発光や電子の抽出性能についても、現在評価を進めている2,2,4-トリメチルペンタンについて行い、その評価手法を確立する。その後他の候補有機液体に対しても同様の評価を行うことで、有機液体TPCとして用いるのに適した液体の調査・開発を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に実施予定であったイオンチェンバーの配管等の改造について、これまでの運用経験に基づき一部の再検討を行なっている。その設計・検討に時間を要したため、改造部品の購入を2020年度に繰り越して実施する予定である。 また、2019年度に購入予定であった光電子増倍管について、納期が2020年度にずれ込んでしまったため2020年度予算で購入する。
|