本研究の目的は以下の通りである。まず、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Camによる可視光撮像銀河サーベイデータに、近赤外撮像データを加えることによって、高赤方偏移の銀河団を同定する。この銀河団サンプルの単位質量あたり・単位体積あたりの個数と弱重力レンズ効果を用いて測定した銀河団質量を用い、ニュートリノ全質量和を制限することである。前年度は、HSCのCOSMOS領域において、Spitzer望遠鏡IRACによる赤外撮像データを組み合わせた解析を行なった。HSCの他の領域に重なるIRACのデータは、COSMOS領域のデータに比べて浅いため、今年度はそれによる測光的赤方偏移への影響を調べ、COSMOS領域以外でも十分に測光的赤方偏移を改善することがわかった。本データ解析遂行のために、大学院生をSpirzerのデータ解析の専門家がいるカリフォルニア工科大学に派遣するなど活発な研究活動を行なった。また、HSCの観測領域と重複するVIKINGサーベイの近赤外データでも測光的赤方偏移が改善するかどうかを調べたが、VIKINGのデータがHSCに比べて相対的に浅いため、残念ながら改善は見られなかった。今後は、2019年前半までのデータを用いて解析されたHSCサーベイデータとIRACの複数のサーベイのデータを組み合わせ、改善した測光的赤方偏移に基づいて高赤方偏移カタログを作成し、先に述べた方法に従ってニュートリノ全質量和を制限する。本若手研究は重複制限により今年度で終了となるが、今後の研究は新たに獲得した基盤(B)に発展的に引き継がれる。
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