研究課題
中性子の電気双極子能率(EDM)測定実験などの超冷中性子(UCN)貯蔵を要する実験においてUCNの実験容器内体積密度を向上させるため、周期的に動作する開閉弁を用いたパルスUCNの貯蔵を目指した。実験計画と装置設計を検討するために報告者は過去の装置開発において作成したUCN輸送計算コードを改良し、容器内での散漫散乱や壁面での中性子吸収による損失を取り扱えるようにして実験結果の予想を行った。この結果として、開閉弁をパルスUCNの繰り返しと同じ8.33Hzで運転した時のみ1.5倍の体積密度上昇が得られるが、開閉周波数を半分以下に落とすと体積密度は開閉弁を使わない場合と同等以下に低下し、実用的な運用を考慮すると体積密度向上は困難であるという結果が得られた。この原因は報告者が使用を予定していた実験容器が大きすぎ、UCNが容器入り口から脱出しづらく、UCNの脱出を開閉弁が妨げる効果が容器内壁面でのUCN損失に比べて小さかったことにあると推察される。たとえばチョッパーを用いて入射パルス周波数を数分の1に間引く条件での計算結果ではパルスUCN貯蔵に期待されるような 2~3 倍以上の体積密度向上が得られており、パルスUCN貯蔵が有効に機能するには非常に離散的にパルスを生成するUCN源や、開口面積に対して非常に小さい容器の使用など、かなり限定された前提条件が必要だと予想される。パルスUCNは貯蔵するよりもパルスをより鋭く切り詰めて透過実験などに用いた方が研究開発における実用性は高いと思われる。このため貯蔵実験は断念したが、開閉弁はUCNリバンチャー開発などの今後の研究開発において貯蔵容器蓋やチョッパーとして有用であるため開発を行った。この結果、開閉時間幅や開閉周期を任意に制御可能かつ12msで開閉可能な開閉弁を開発し、長期に渡る研究開発に使用可能な耐久性を持つことを確認した。
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JPS Conference Proceedings
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