研究課題/領域番号 |
18K13564
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北川 暢子 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 研究員 (20727911)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 飛跡検出器 / 宇宙線観測 |
研究実績の概要 |
宇宙線ミューオンラジオグラフィーは、大型対象物の内部構造を非破壊で調査することができる技術である。数mから数10mの構造物を対象とするときは、数100MeV~20GeV程度のエネルギー領域の宇宙線ミューオンのフラックスが重要である。しかし、この領域は観測データが少なくモデルによる不定性も大きいことから、このエネルギー帯の地上でのミューオンのフラックの観測を行うことを本研究の目的としている。また、地磁気の影響により緯度の違いによるフラックスも異なることから、地球上の様々な場所での観測が可能なポータビリティーが高い検出器の開発を目指している。 本研究では、電源不要な状態で素粒子の飛跡を記録することができる原子核乾板を用いた検出器の開発を行っている。原子核乾板は、透明な薄い基板(数100ミクロン~数mm)の両面に感光層である乳剤を塗布したフィルム状の素粒子検出器である。ミューオンの運動量の測定をする手法として、(1)ECCによる物質中の多重電磁散乱による運動量の推定 (2)CESによる磁場中での荷電粒子の経路変化量による運動量の推定の二つがある。2018年度の研究では、2017年にCERNでパイオンビーム(2~10GeV)を照射した検出器で、運動量推定法の妥当性を検証した。また、KEKにある標準磁場発生装置内(1.5T相当)に数日CESを設置して宇宙線のテスト的な観測を行い、現在解析中である。研究グループ内では、より位置精度が良いガラス基板を用いた原子核乾板や厚型のプラスチック基板を用いた角度精度向上を見込んだ検出器の開発を行っており、今後はこれらの新型の原子核乾板を積極的に用いることを考えている(上記のCERNのテストではガラス乾板を用いた)。また、磁場の発生装置については来年度に永久磁石の購入を行い、ポータブルな検出器の開発を目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検出器の1つであるCESを用いた運動量の推定には磁場を発生させる装置の開発又は使用環境が必要不可欠である。永久磁石を用いた磁場の発生を考えているが、研究費内でテスト的に使用できるような磁石の購入先の選定が遅れ、磁場発生装置の開発には着手できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)永久磁石の購入を行い、ポータブルなミューオンの観測に適した磁場発生装置の開発を行う。(磁場の一様性の確認や、検出器全体のデザインを行う)(2)位置精度や角度精度の向上を見込んだ新型の原子核乾板の開発を研究を行っている学生と共に開発を進める。(3)CESとECCのハイブリッド型の検出器のデザインを行い、(1)と(2)の試作に実装して性能の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費の大部分を占めると考えていた永久磁石の購入であるが、KEKの磁場発生装置を使用したテストをさせて貰えたことによりその評価を元に購入する磁石のスペックの検討を行いたかったため、磁石の購入が遅れた。
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