研究課題/領域番号 |
18K13564
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北川 暢子 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 研究員 (20727911)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 宇宙線イメージング / 飛跡検出器 |
研究実績の概要 |
宇宙線ミューオンを用いた構造物の内部を透視する技術”宇宙線イメージング”は、火山や原子炉やピラミッドと言った数10mから1km級の大型構造物の調査技術は確立されつつあり、更なる高精度化には複数地点観測におけるトモグラフィーや検出器の大規模化が挙げられる。一方で、数10m未満の小中型の構造物を対象とする場合は、大型構造物に比べて 現行の検出器でも充分なシグナル数が得られる場合が多いが、低エネルギー領域(10GeV以下)のミューオンのフラックスのモデルが確立していないために、空洞の大きさや密度の決定精度の低下が起こってしまう。 そこで、原子核乾板検出器を用いた宇宙線観測を行い、現時点で提唱されているモデルとの比較を行い、低エネルギー領域でのミューオンフラックスの理解を深める目的でこれまでに観測してきたデータを複数の観点から解析を行った。 水中で観測した水平に設置したデータだけでなく垂直に設置したデータとを合算させて、仰角約10度から90度までのミューオンフラックスを得た。また、エジプトのピラミッドの入り口付近のデータ解析から物質長50m未満でM. Guanのモデルがデータとよく一致することがわかったが、20m未満の領域では15%ほどの差異があり、やはり低エネルギー領域のフラックスの理解が必須であることが再認識された。 2020年度ではCOVID19のため検出器の材料となる物資の調達が困難だったため、低エネルギーミューオンフラックスの測定のための新たな検出器の製作は2021年度に行うことにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の影響を受け、CES(Compact Emulsion Spectrometer)で使用する永久磁石の再選定や入手先の選定等遅れが生じた。また、使用するガラスを基板とした新型乾板の開発・性能評価も遅延しており、当初予定していた磁場印加型の検出器の製作には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
水中で観測した宇宙線のデータからは、低エネルギー領域ではミューオンだけでなく電子の混入も示唆されているので、粒子識別可能な永久磁石と新型原子核乾板を用いたCESのデザインを行うと共に、テスト機の作製を行う。並行して、水中で観測した宇宙線データの解析をさらに進め、低エネルギー領域の宇宙線(ミューオン、電子)フラックスについての論文を纏める。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響を受け、当初2020年度に購入予定であった永久磁石の選定や購入先の選定に遅れが生じたため。2021年度予算は、永久磁石2個とそれらを検出器として組み立てるための治具、新型乾板の基板であるガラス板の購入に充てる。 乾板の乳剤部分は2020年度に購入した薬品を用いて乳剤製造を行い、購入予定であるガラス基板に塗布することで新型乾板を作製する。
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