研究課題/領域番号 |
18K13565
|
研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
本橋 隼人 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (00708563)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 修正重力 / 高階微分 / ブラックホール / 宇宙論 / インフレーション |
研究実績の概要 |
今年度の研究成果として、回転ブラックホール解に関する研究成果が挙げられる。まず、縮退高階スカラーテンソル理論において、一般相対性理論が持つ全ての厳密解が許されるクラスを、共変的な解析により特定した。また、disformal変換を利用したカー解からのズレを持つ厳密解を生成し、それが厳密解として許される理論のクラスを突き止めた。カー解は一般相対論における唯一の回転ブラックホール解であるため、今回発見したカー解からのズレを持つ厳密解は、高階微分修正重力理論を観測的に検証する上で重要と言える。 一方、上記の研究成果を宇宙論的なLCDM膨張解に応用するとともに、前年度に提唱したスコルダトゥーラ項を考慮したダークエネルギー模型の研究を行った。これにより、ホライズン内の物理がスコルダトゥーラの影響を受けることが明らかとなった。このような効果を考慮したもとで、物質密度揺らぎが従う実効重力係数を導出した。これは銀河団スケールの大規模構造の形成に関わるものであり、観測的検証につながる成果である。 また、縮退理論の定式化の根幹を司るオストログラドスキー定理の非ホロノミック系への拡張および場の量子論における定式化を行った。これらの研究成果は、定理の適用範囲を低階微分系に拡張するとともに、縮退条件に基づいたこれまでの理論構築の妥当性を場の量子論の立場からより強固にするものである。 さらに、縮退条件を線形レベルで満たすより一般的な縮退理論におけるインフレーションを調べた。これは現在知られている3次までの縮退理論模型より広い枠組みを提供するものであり、Dインフレーションと名付けた。この理論模型における背景時空のコーシー問題を議論し、具体的になだらかなポテンシャルに対してアトラクター解を得た。さらに摂動論の解析を行い、曲率揺らぎのパワースペクトルに特徴が現れることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、前年度の研究成果をさらに押し進め、複数の回転ブラックホール解の発見、スコルダトゥーラ機構の宇宙論への応用、オストログラドスキー定理の拡張、縮退理論でのインフレーションなど、多角的に高階微分理論を検証することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で、高階微分重力理論における回転ブラックホール解を発見することができた。これを一般相対論と区別するためには摂動論が重要となる。まずは一般相対論でのカー・ニューマン・ドジッター解における摂動論の理解を深め、修正重力理論の検証への応用を考えたい。 さらに、前年度に提案したスコルダトゥーラ機構の発展的研究も継続する。具体的には、ブラックホール摂動における観測量との関わりや、インフレーション模型における役割の解明を予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末の国際会議の参加登録費の通貨換算および振り込み手数料の調整のために次年度使用額が生じた。これは次年度に出版予定の論文の雑誌投稿料に充てる予定である。
|