研究課題
該当年度には、5MeVのα線を用いた柱状再結合の原理実証の結果をまとめた査読付き論文が出版された。キセノンガス中の柱状再結合の角度依存性は、もし低エネルギーの核飛跡に対して観察されれば、方向に敏感な暗黒物質の探索に使用することができる。 8気圧のXeガスを充填した高圧ガス検出器における5.4MeVのアルファ粒子の柱状再結合を調べるために、シンチレーション光と電離電子の収率を測定した。再結合光は脱励起後数マイクロ秒後に発生するので、シンチレーション光子は速い成分と遅い成分に分けて考えることができる。このことを確かめるために、シンチレーション光の波形を電場を変えつつ測定した。脱励起光に由来するとされる速い成分は電場依存性がなかったのに対し、遅い成分は電場が高くなるにつれて発光量が減少した。このことから、遅い成分は再結合光によるものであり、期待される角度依存性もこの遅い成分に現れると考得られる。信号の飛跡角度依存性を測定するために、α線の時間構造からcosθを計算する手法を用いた。これについては、信号波形のシミュレーションと突き合わせ、手法が妥当であることを示している。速い成分はドリフト電場に対する角度依存性がないが、遅い成分は飛跡と電場が揃うときに増加した。この結果は、電場に対する飛跡の角度がシンチレーション光の時間ごとの発光量から再構成できることを示している。この論文の結果は、本研究の肝となる技術に関する内容、かつ世界初の測定結果をまとめたものであり、自身の実験が世界を最もリードしているといえる。同内容は国際会議(DBD2018、XeSAT2018)でも発表した。また、低エネルギーの性能評価の準備として、252Cfからの中性子を照射した測定を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初から予定していた論文が出版され、低エネルギーの性能評価に取り組み始めることができた。
KEKの中性子源を用いた低エネルギーの原子核散乱事象を用いて、柱状再結合の性能評価を行う。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Journal of Instrumentation
巻: 13 ページ: P0715
10.1088/1748-0221/13/07/P07015